珠海市と深セン市でeVTOL低空物流の実証運航が成功

(中国)

広州発

2025年08月13日

ドローンと電動垂直離着陸機(eVTOL)の中国のメーカーで、都市航空モビリティー(UAM)を手掛ける億航智能控股(広州)(イーハン、本社:広州市)は8月1日、同社が開発したVT20シリーズの物流用eVTOLによる珠海市~広州市間の貨物輸送の往復運航に成功したと発表した。この往復運航は7月30日に広東省珠海市で開催された「万山群島低空総合応用大会」で行われたものだ。

今回の運航ルートは、広東・香港・マカオグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)初の超長距離無人機物流航路となる。水産品を搭載したeVTOLが珠海市唐家港ドローン物流運営基地から出発し、中山市を経由して広州市の億航未来城穂港埠頭に着陸した。復路では医療検査用サンプルを珠海市まで輸送した。片道の飛行距離は83キロ、所要時間は約55分で、渋滞がない場合の陸路輸送と比較すると、約40分の短縮、さらに渋滞時の陸路輸送との比較では、約1時間以上の短縮が可能となった。今後、粤港澳大湾区での生鮮食品や医薬品など迅速な輸送が求められる物資の輸送ニーズが期待されることから、イーハンは同eVTOLの定期運航化の実現を見据えている。

また、eVTOLメーカーの上海峰飛航空科技(オートフライ、本社:上海市)は8月3日に深セン市で、独自開発した2トン級eVTOL「凱瑞鴎」による陸地と海上石油プラットフォーム間の物資輸送運航に世界で初めて成功した。生鮮果物と緊急医薬品などを搭載したeVTOLは深セン市を出発し、58分間の海上飛行を経て、深セン市海岸線から150キロ離れた恵州市19-3石油プラットフォームに着陸した。これまで南シナ海で海上石油プラットフォームへの物資輸送は主に船舶に依存しており、片道約10時間を要していた。緊急物資や人員輸送は主にヘリコプターを用いていたが、高コストが課題となっていた。eVTOLによる輸送は船やヘリコプターに比べ、対応速度、環境性能、運用コスト、限られた離着率スペースへの適応性などの面で優位性を持っている。

上述の2例でそれぞれ出発地となった珠海市と深セン市はともに、低空経済の促進の支援を強化している。珠海市政府は2月26日に「珠海市科学技術成果転移・転化ハイランド構築に向ける措置外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表し、低空経済や海洋経済などの分野で科学技術成果の活用を促進する優遇措置や支援策を打ち出した。深セン市政府も、2023年12月の低空経済の質の高い発展を目指す政策(2024年4月11日記事参照)に続き、2025年7月31日に「深セン市低空インフラの高度化整備に向ける建設プラン(2024~2026年)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表し、同市を「世界低空経済最先端都市」とする目標を掲げている。

(陳昕)

(中国)

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