米シカゴ連邦地裁、E-ベリファイ利用制限する州法は違法との連邦政府の訴え却下
(米国)
シカゴ発
2025年08月26日
米国のシカゴ連邦地方裁判所は8月19日、連邦政府による「イリノイ州の雇用者にオンラインシステムE-ベリファイ(E-Verify)の利用を制限する法の無効化」を求める申し立てを却下し、同州の「連邦政府の提訴却下」の申し立てを認めた。E-Verifyは、国土安全保障省(U.S.Department of Homeland Security:DHS)と社会保障庁(U.S.Social Security Administration:SSA)が開発、導入したシステムで、雇用主が従業員のI-9(就労資格証明書)から入力した情報をDHSとSSAが保有する記録と照合し、雇用資格を確認するオンラインシステムだ。イリノイ州はカリフォルニア州とともに、州政府が民間事業者に対して E-Verifyの利用を法的に制限する唯一の州となっている。
連邦政府は2025年5月1日に提出した申し立てで、「イリノイ州の『職場におけるプライバシー権法』の改正案が移民に関連する連邦の職務遂行を妨害、または矛盾させる目的で、連邦のE-Verifyプログラムに参加しようとする雇用主に対して追加の規制、要件を課し、または制裁を科している」とし、「これらが米国憲法の優越条項に違反するため、同法は無効とされ、差し止められるべき」と主張していた。これに対し、シカゴ連邦地裁のシャロン・ジョンソン・コールマン裁判官は「政府の主張はいずれも推測にすぎない」とし、「イリノイ州法が(連邦法に)優先しているという主張を正当化するのには不十分」として、連邦政府の訴えを退けた。連邦政府が今回の判決を受けて今後どのような対応を取るかは不明だ。
信用情報や雇用者向けサービスを提供する大手情報サービス企業エクスペリアン(Experian)によると、8月現在、大半の州で、採用時にE-Verifyを使用して資格確認をすることは任意となっている。政府契約業者など一部でのみ必須となっているのは12州で、使用義務化が導入されたのは10州にとどまる(州によって企業規模など条件が異なる)。今後、州法などによってE-Verifyの義務化を進める州は増える見込みで、より厳格な雇用確認基準への移行が予想されている。
(星野香織)
(米国)
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