イタリア政府、世界最長のつり橋建設計画を承認、IHIなど参画

(イタリア、日本)

ミラノ発

2025年08月15日

イタリア政府は8月6日、シチリア州(シチリア島)とカラブリア州(イタリア本土南端)を結ぶ世界最長のつり橋となるメッシーナ海峡大橋建設計画の最終案を承認した(政府プレスリリース:イタリア語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。総投資額は135億3,200万ユーロ。同大橋は中央径間が3,300メートルで、現在世界1位のトルコのチャナッカレ1915橋の2,023メートルを1キロメートル以上超える長さとなる。同プロジェクトは1971年から構想されていたが、2012年のマリオ・モンティ政権下での中断を経て、2022年にジョルジャ・メローニ現政権により協議が再開された。今回、メローニ首相直属の機関で、公共投資政策について省庁を超えて調整する機関であるCIPESS(経済計画と持続可能な開発に関する省庁間委員会)が承認したことにより、大きく前進することとなった。

CIPESSの承認を受け、イタリア大手ゼネコンのウィビルド(WeBuild)は、同社が率いる特定目的会社のユーロリンク(Eurolink)が、イタリア政府出資のメッシーナ海峡公団と追加契約に調印したと発表した。契約額は106億ユーロで、ユーロリンクにはウィビルドのほかに、IHIなど4社が参画している。IHIは、ウィビルドと共同でルーマニアにおける同国最長の大型つり橋であるブライラ橋を建設した実績を有し、またトルコのつり橋であるイズミット湾横断橋(オスマン・ガーズィー橋)など、海外の大型橋梁(きょうりょう)建設において豊富な経験を持つ。

本プロジェクトは、橋梁だけでなく、シチリア側およびカラブリア側の高速道路や鉄道、駅などのインフラ整備も含まれており、40キロメートル以上の道路・鉄道網の敷設を計画している。また、EU域内の共通交通圏の創設に向けた「汎(はん)欧州運輸ネットワーク(TEN-T)」(2023年12月25日記事参照)に組み込まれており、南イタリアの物流や経済活動の強化だけでなく、欧州および地中海地域の複合的な交通網の強化においても重要な役割を果たすと期待されている。

報道によると、メローニ首相はCIPESSの承認式で、本計画の再開を決断した副首相兼インフラ・交通相のマッテオ・サルビーニ氏に謝意を示すとともに、この大規模プロジェクトはイタリアの現在と未来への投資だとして、雇用やさまざまな機会を提供し、次世代に結束したイタリアを遺産として残すことができると述べた。

サルビーニ・インフラ・交通相は、本計画が実現すれば、現在鉄道で2~3時間を要する貨物や乗客の移動時間が、15分に短縮されると述べた。また、本計画に参画する企業の1つであるIHIについて、現在世界2番目の規模の橋梁(明石海峡大橋)を実現した企業であり、非常に専門性が高いと評価した。さらに、着工時期については2025年9月もしくは10月との見通しを示した。

(平川容子)

(イタリア、日本)

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