スリランカ政府、最低賃金を引き上げ
(スリランカ)
コロンボ発
2025年08月05日
スリランカ労働省は7月23日、全国労働者最低賃金法を改正し、全国の民間企業の最低月額賃金および最低日給を引き上げた。最低月額賃金は、2025年4月1日時点に遡及(そきゅう)して2万7,000スリランカ・ルピー(約1万3,230円、1スリランカ・ルピー=約0.49円)に、2026年1月1日からは3万ルピーになる。最低日給も2025年4月1日時点に遡及して1,080ルピーに、2026年1月1日からは1,200ルピーになる。
なお、民間企業の最低賃金は直近では2024年9月に改定されており、最低月額賃金が1万2,500ルピーから1万7,500ルピーに、最低日給が500ルピーから700ルピーに引き上げられていた(注1)。また公務員の最低賃金は、2025年3月に9年1カ月ぶりに改定され、2025年1月時点に遡及して最低月額賃金が2万4,250ルピーから4万ルピーに引き上げられていた(注2)。
スリランカのアヌラ・クマーラ・ディサーナーヤカ大統領は、2024年9月の大統領選挙で公正な富の配分を訴えて当選しており、2025年度予算案では最低賃金の引き上げを主要政策の1つとして掲げていた(2025年3月3日記事参照)。
スリランカの物価上昇は緩やかになっており、スリランカ・センサス統計局(DCS)によると、2025年5月の全国消費者物価指数(NCPI)上昇率(インフレ率、注3)は、前年同月比0.6%だった。一方で、賃金水準は2022年に高騰した物価に追い付いておらず、2025年5月時点の公務員の実質賃金(2016年=100)は78.7、フォーマルセクターの実質最低賃金(1978年12月=100)は92.7、インフォーマルセクターの実質賃金(2018年=100)は89.6にとどまっている(添付資料図参照)。スリランカ・センサス統計局によると、2025年5月時点の国全体の貧困線(基本的な生活を満たすための1人当たり1カ月の最低支出額)は1万6,421ルピーで、2019年の6,966ルピーの2.4倍になっている。
(注1)従来、労働者予算救済手当法では、雇用主に対して、月額給与が4万ルピー以下の者には最大3,500ルピーを、日給が1,600ルピー以下の者には140ルピーを「予算救済手当(Budgetary Relief Allowance)」として最低賃金に加えて支給するよう定めていた。今回の全国労働者最低賃金法改正により、予算救済手当は最低賃金に含まれることになった。
(注2)従来、公務員には、2,500ルピーの月額暫定手当(Monthly Interim Allowance)、5,000ルピーの月額手当が月額賃金に加えて支給されていたが、2025年3月の改正により、これらの手当が賃金に含まれることになった。ただし、1万7,800ルピーの生活費手当(Cost of Living Allowance)は引き続き支給される。なお、公務員の日給は、当該業務に応じた等級の月額賃金を30で割った金額が支給される。
(注3)全国ベースのNCPIは基準年2021年=100としている。
(大井裕貴)
(スリランカ)
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