インドの全国金融包摂浸透キャンペーン、開始1カ月で大きな成果

(インド)

調査部アジア大洋州課

2025年08月26日

インド財務省傘下の金融サービス局(DFS)は、7月1日から9月30日までの3カ月間の予定で、全国的な金融包摂浸透キャンペーンを開始した。全国各地で既に約10万回のキャンペーンを開催し、その1つであるプラダン・マントリ・ジャン・ダン・ヨジャナ(PMJDY)による新規口座開設数が66万件に上るなど、開始1カ月で大きな成果を上げている(添付資料表参照)。

このキャンペーンは、約27万のグラムパンチャヤート(注)、都市部の地方自治体(ULBS)を網羅的にカバーし、対象となる全ての国民にPMJDYをはじめとする主要な金融制度を普及させることを目的としている。各金融制度の内容は次のとおり。

  1. プラダン・マントリ・ジャン・ダン・ヨジャナ(PMJDY):政府が2014年に開始した金融包摂政策で、全ての国民が銀行口座を持てるようにすることを目的とした国家政策。銀行サービスにアクセスが困難な貧困層を主なターゲットとしている。
  2. プラダン・マントリ・ジーバン・ジョティ・ビマ・ヨジャナ(PMJJBY):政府が2015年に導入した低所得者向けの生命保険制度。対象年齢は18~50歳で、国内の銀行口座保有者は誰でも加入可能。保障内容は死亡時のみ支払われる死亡保険。
  3. プラダン・マントリ・スクラシャ・ビマ・ヨジャナ(PMSBY):政府が2015年に導入した低所得者向け事故保険制度。対象年齢は18~70歳で、国内の銀行口座保有者は誰でも加入可能。保険料は年額20ルピー(約34円、1ルピー=約1.7円)と非常に低額で、低所得層や非労働者向けに設計された補償プランとなっている。主な補償内容は事故による死亡で20万ルピー。
  4. アタル・ペンション・ヨジャナ(APY):政府が2015年に導入した国民年金制度。対象年齢は18~40歳で、60歳から年金受給開始、銀行口座を保有する国民は誰でも加入が可能。

政府は同キャンペーンを通じて、公平かつ公式な金融サービスへの加入を強化するとともに、国内の包摂的かつ持続可能な経済発展の実現を目指している。今後は広告や広報活動を通じて、国民に周知、制度活用の促進を進めていく。

(注)インドの地方自治体制度「パンチャヤート・ラージ制度」の最下層に位置し、農村部で最も基礎的な地方自治体制度。村の有権者が選んだ代表(議員)で構成し、議長を中心に運営している。

(野本直希)

(インド)

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