シンガポール首相、基本関税10%は理想的ではないが、対応可能との認識

(シンガポール、ASEAN)

シンガポール発

2025年08月01日

シンガポールのローレンス・ウォン首相兼財務相は7月29日、米国による10%の基本関税について、「理想的ではないが、対応は可能だ」との認識を示した。ウォン首相は、米国経済が現状の環境下でも堅調で、イノベーション活動も活発なため、これからもシンガポールにとって米国との貿易機会は豊富だと指摘した。公共政策研究所(IPS)とシンガポール・ビジネス連盟(SBF)が共同主催するフォーラムでの対談で述べた。

シンガポールは米国の10%の基本関税のみが賦課されている。シンガポールはこの基本関税の引き下げを望んでいるが、実現するかどうかは不透明だ。シンガポールの「ストレーツ・タイムズ」紙(7月29日付)によると、訪米(同月20~26日)から帰国したガン・キムヨン副首相兼貿易産業相は同フォーラムで「米国が基本関税の引き下げについて話し合うムードになかった」と語った。また、基本関税を10%で維持するか、引き下げるかについても、不明と説明した。ガン副首相はシンガポールから米国への輸出医薬品に対する関税の有無についても、今回の訪問で協議できなかったと述べた。副首相は今回の訪米で米国のハワード・ラトニック商務長官とは協議できなかったが、スコット・ベッセント財務長官やジェミソン・グリア米国通商代表部(USTR)代表らと会談した。

ルールに基づく国際秩序からの米国の後退、今後も継続へ

ウォン首相はフォーラムの中で、米国が「ルールに基づく国際秩序」を維持する役割から後退しており、このトレンドがトランプ政権以降も継続するとの見方を示した。こうした変化に対する今後のシンガポールの対応策として、志を同じくする国々とともに、WTOなどの国際機関や、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)などの協定を基盤にした連携を強化するほか、ASEANの統合を推進していく考えを示した。同首相は「ASEANの1人当たりGDPが現行の6,000米ドルから、1万米ドル以上に拡大すれば、地域にとってのゲームチェンジャーとなる」と語った。

(本田智津絵)

(シンガポール、ASEAN)

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