英政府、政府機関と連名でロードマップ発表、電力使用時間の移行促進
(英国)
調査部欧州課
2025年08月01日
英国政府は7月23日、ガス・電力市場局(Ofgem、エネルギー部門の規制機関)と、エネルギー・システム・オペレーター(NESO、電力システム監督機関)と連名で、クリーン・フレキシビリティー・ロードマップを発表した。このロードマップは、エネルギーインフラを最大限活用し、消費者のエネルギー料金を最小化するため、クリーンで電力の需給状況に応じた柔軟な電力システムのビジョンを提示するものだ。より多くの消費者がオフピーク時間に電気を使用するよう支援することで、電力網の効率性と強靭(きょうじん)性を高め、2050年までに最大700億ポンド(約13兆9,300億円、1ポンド=約199円)のシステム費用削減を見込むとしている。
同ロードマップは4つのセクションから構成される。「短期的な柔軟性」「長期的な柔軟性」と、短期・長期の双方に係る「共通の促進要因」の3つのセクションで各分野の今後の方向性を示し、「クリーン・フレキシビリティー・ロードマップの実現」でロードマップのガバナンスの枠組みを提示する。「短期的な柔軟性」「長期的な柔軟性」「共通の促進要因」の3つのセクションで示された主な方向性は次のとおり。
○短期的な柔軟性
- 適切な報酬とインセンティブの創出、ヒートポンプや電気自動車(EV)などの柔軟性に資する技術の普及、適切な消費者保護などにより、消費者主導柔軟性(CLF、注)を促進。
- 系統用蓄電池の投資環境について、2025年中に外部からの助言を受け、民間投資が不足している場合は、ナショナル・ウェルス・ファンド(NWF、2024年7月18日記事参照)が提供できる金融ソリューションを模索。
- 2027年に発表予定の中央集権型戦略的ネットワーク計画(CSNP)を活用し、国際連系線プロジェクトの優先順位を特定。EUの電力市場への参入も検討。
○長期的な柔軟性
- キャップアンドフロアスキーム(2024年10月18日記事参照)による長期エネルギー貯蔵(LDES)支援を継続するほか、ブレンデッドファイナンスが新たなLDES技術の拡⼤にどのように貢献できるかを模索。
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低炭素ディスパッチャブル電源(出力の調整が可能な電源)の支援を継続。バイオメタンについては、2025~2026年度(各年度は4月始まり)に既存のグリーンガス支援制度
に続く包括的な政策枠組みに関する協議を発表予定。
「共通の促進要因」では、電力市場制度見直しや系統接続ルール見直しの継続、エネルギーシステムのデジタル化、エネルギー計画の改善とサプライチェーン強化に資する国内製造業への投資についても言及している。
(注)電力消費をピーク時間から、供給力が豊富で安価、クリーンなオフピーク時間に自発的にシフトさせること。
(齊藤圭)
(英国)
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