アフリカでの鉱物資源開発の人材育成と人的ネットワークに関するセミナー開催
(アフリカ、マダガスカル、ザンビア、日本)
調査部中東アフリカ課
2025年08月22日
国際協力機構(JICA)は8月19日、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)のテーマ別イベントとして、「アフリカ鉱物資源で世界をつなぐ」と題したセミナーを開催した。JICAの川村謙一理事は、アフリカの鉱物資源は世界から求められており、アフリカの発展にも重要だと述べた。アフリカで産出するリチウム、コバルト、ニッケル、銅などは太陽光パネルやバッテリーの材料にも使われ現代社会に必要だが、資源開発は健康や環境に影響も与え得ると指摘した。
JICAは、鉱業で大きな課題となっている人材開発のため、「資源の絆プログラム」を実施している。アフリカの大学や省庁から担当者を招き、実践的な資源政策、資金調達、法整備などの人材育成を行うという。また、人的ネットワーク強化も目的としている。資源産国など南部アフリカや東アフリカからの研修生も多い。既にアフリカから100人以上を招聘(しょうへい)しており、モザンビーク鉱山局長も卒業生だとした。
マダガスカルの鉱物省によると、同国ではコバルトやレアアース、グラファイト、ボーキサイト、鉄などの鉱物資源が豊かだ。一方で、法制度の課題や、違法行為が多いという状況にもあるという。地質データも不足していたところ、マダガスカル政府がJICAと協力した調査によると、質の高いベリリウムが豊富にあることが判明したという。
ザンビア大学のエマニュエル・チャンダ鉱山学部学部長によると、政府の支援により、同国で鉱物資源研究センターや資源管理センターを立ち上げる。これらの取り組みには資源の絆プログラムの卒業生も貢献しているという。南部アフリカ諸国とのネットワークを強化にもつながるという。
秋田大学国際資源学部の安達毅教授は、地質資源関連に強い九州大学と北海道大学と協力し、2024年まで実施していた情報学と資源産業を掛け合わせたスマートマイニングプログラムについて解説した。鉱山が多いアフリカ諸国と協力することで、現場にもとづいた資源開発の教育につながるという。また、アフリカからの留学生増加をサポートするプログラムも実施しているという。
日鉄鉱業の田中隆之氏によると、東南アジアなどでは海外での鉱山開発にあたり、現地事情や文化理解のために、資源の絆プログラムの卒業生と協力しているという。あわせて、日本での学生のインターンにも協力しているという。
日本の財務省は、強靭(きょうじん)で包摂的なサプライチェーンの強化(RISE)パートナーシップについて説明した。銅生産の大きいザンビアにおいて、大学や研修センターなどでの人材育成を実施し、付加価値の向上を目指す。マラウイやブルンジでもロードマップ作成を検討しているという。また、鉱物資源のサプライチェーンにおいて製錬を行う国は限られており、これらの国の輸出制限に供給が大きく影響されることから、経済安全保障に重要だと指摘した。
(井澤壌士)
(アフリカ、マダガスカル、ザンビア、日本)
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