カンボジアへの米相互関税、19%に引き下げで合意

(カンボジア、米国)

プノンペン発

2025年08月15日

米国のドナルド・トランプ大統領は7月31日に署名した大統領令で、カンボジアに対する相互関税を19%とし、8月7日から適用すると発表した。関税率は7月7日発表の36%(2025年7月9日記事参照)からさらに引き下げたかたちだ。カンボジアのフン・マネット首相は当初(4月2日)発表の49%から大幅に引き下げられたことを受け、「関税の引き下げは、国民の生活水準を向上させるために必要な措置だ。19%での合意は外交努力の成果で、カンボジアの関税交渉チームに賛辞を送りたい」とコメントした。

カンボジアとタイの間では7月24日から、領有権を争う係争地での交戦が発生し、民間人の死者も発生する軍事衝突に発展していた。トランプ大統領が「停戦をしない限り、関税交渉で合意することはない」と両国に圧力をかけ、停戦を働きかけていた。

関税交渉を経て、カンボジアは8月8日に政令に署名し、米国から輸入する全製品(中古品を除く)に対する関税を0%とした(注1)。また、スン・チャントール副首相は8月1日、国営航空会社エア・カンボジアが米国の航空機メーカー・ボーイングからB737MAX8型機を10機購入する交渉を継続していると発表していた。これに加え、タイとの停戦合意が大幅な関税引き下げにつながったとみられる。

カンボジアの最大の輸出先は米国で、全輸出額の約38%(注2)を占めている。相互関税は19%に引き下げられたものの、縫製業などでは価格競争力の低下による輸出量の減少が懸念される。

一方で、カンボジアの経済特区に入居する日本企業からは「サプライチェーンに米国は含まれておらず、直接的な影響はない。しかし、ミャンマーやラオスにカンボジアより高い40%の相互関税が発動されることにより、相対的に有利なカンボジアへの工場移転が進む場合、国内での人材獲得競争が激化し、安定的な生産体制に影響を及ぼす可能性がある」という懸念の声が聞かれた。

(注1)輸入時の付加価値税(VAT)や特定品目を対象とする特別税(Special Tax)は課される。

(注2)カンボジア関税消費税総局(GDCE)が2025年1月に発表した2024年(1〜12月)の輸出入統計に基づく。

(宮嶋紀輝)

(カンボジア、米国)

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