決算発表からみる米国企業の関税の影響、需要減を懸念する声も
(米国)
ロサンゼルス発
2025年08月26日
米国の関税政策によって米国で一部商品が値上がりし、各種経済指標に波及し始めている中で、各社の2025年第2四半期(4~6月)決算発表が行われている。主にコロラド州のニュースを扱うCPRが同州の大手企業の決算発表を基に、関税の影響をまとめている(8月22日電子版)。
アルミ缶製造を行うボール(本社:コロラド州ウエストミンスター市)はアルミ関税引き上げの影響を受けており、メキシコ工場での生産能力が圧迫されているという。ダニエル・フィッシャー最高経営責任者(CEO)は「今後の不確定要素は、メキシコ工場をこれまで同様に活用できるかどうかだ」と述べている。スクラップ金属の価格は既に上昇しているが、フィッシャー氏は、現時点では個別の金属市場よりも、関税によって経済全体に広がる需要面の影響をより懸念しているという。
サンダル製造を行うクロックス(本社:コロラド州ブルームフィールド市)の株価は1月以降、24%下落している。中国やベトナム、インドなどでの生産に大きく依存する同社は5月、関税を巡る不確実性から、2025年の業績予想を撤回した。8月5日の決算報告によると、同社の第3四半期(7~9月)の売上高は最大11%減少すると予想されている。アンドリュー・リースCEOは、インフレ再燃を懸念する消費者が買い控えをしており、関税コストを相殺するために値上げを行うことは困難との見通しを示している。また、スーザン・ヒーリー最高財務責任者(CFO)は「将来の関税変更を予測することはできないため、現在の関税率を前提に事業計画を立てている」と述べている。
「ザ・ノース・フェイス」「ヴァンズ」「ティンバーランド」などを展開するアパレル企業のVFコーポレーション(本社:コロラド州デンバー市)は、現在導入されている関税制度は当初懸念されていたほど極端ではないものの、それでも痛手となるだろうとコメントしており、2026年の最終利益を最大7,000万ドルも押し下げる可能性があるとの見通しを示している。ブラッケン・ダレルCEOは関税の影響について「なぜ経済がこれほど好調なのか、なぜ関税の影響が表れていないのかといった議論が盛んに行われている。私は、まだほとんどの人のコストに関税の影響が反映されていないからだと考える。関税は在庫状況を通して、コストに反映されつつある」と述べている。
(堀永卓弘、クリストファー・ベイカー)
(米国)
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