大阪・関西万博を契機に、カナダへのスタートアップ進出セミナーを大阪で開催
(日本、カナダ)
大阪本部海外ビジネス推進課
2025年08月05日
ジェトロとカナダのトロント発スタートアップ(SU)支援団体DMZは7月29日、大阪・関西万博を契機に大阪で「SUカナダ進出セミナー」を開催した。カナダの連続起業家で新規株式公開(IPO)経験を有するDMZメンターのマット・マン氏が、現地の住宅・不動産・建設およびモビリティ分野の状況・トレンドと日本のSUにとってのビジネスチャンスについて講演したほか、ジェトロ・トロント事務所員が同国のSUエコシステムを紹介した。
セミナーでは、まず、ジェトロ・トロント事務所プロジェクト・コーディネーターのグリーンバーグ綾子氏がカナダのSUエコシステムについて概説した。カナダの強みとして、(1)民族や産業の多様性、(2)人口増が続く成長市場、(3)手頃で質の高いSTEM(注)人材の存在、(4)SU分野における手厚い公共部門の支援、(5)政治的安定性などを挙げ、特に大きな強みとして、人口が約4,100万人ながら年率1%前後増加していること、産業構造が鉱業・エネルギーと製造業がバランスよく分布しており、資源価格の変動による影響を相殺できる点を強調した。また、人件費が米国に比べ安価で、さらにオフィス賃料は米国サンフランシスコ・ベイエリアに比べ、カナダ主要都市は半額というコスト面でもメリットがあると述べた。
加えて、カナダは人工知能(AI)の発展に向け、経済、倫理、制作、規制分野で世界をリードする存在であり、海外からのAI研究者や学生を積極的に招聘(しょうへい)し、多様性を強化している。日本企業においても、トロント大学では富士通やコニカミノルタが、モントリオールの大学でデンソーや日立製作所が共同研究を行っている、と語った。
登壇者によるプレゼンの様子(ジェトロ撮影)
マット・マン氏は、カナダの不動産・建設分野およびモビリティ分野において日本のSU進出が望まれていると説明した。カナダの不動産と建設業界は過去数十年間で類を見ないほど非常に早いスピードで成長しており、不動産開発業者や自治体などは、カナダ国内外から革新的技術を有するSUを探しているという。とりわけ、モジュール建設(プレハブ)、許認可の自動化、省エネ住宅分野の起業家を、政府やベンチャーキャピタル(VC)が支援していると指摘。これにより、当該分野のSUの設立が過去5年間で32%増加した、と語った。
モビリティ分野においても、人口増による都市の拡大速度に交通システムが追い付いていないため、渋滞の発生やインフラの老朽化などにより数十億ドルの損失が生じている。このため、政府や交通機関、民間部門では電気自動車(EV)インフラ、コネクテッド車両システム、AIによる交通技術をはじめとする次世代のモビリティソリューションを求めていると述べた。
なお、本イベントは起業家などの海外派遣プログラム「J-StarX PropTech & Mobility Program(Toronto)」(2025年9月下旬~2026年3月)のPRを目的に開催され、東京、名古屋でも同様のイベントが行われた。
(注)科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の分野を学ぶ教育のこと。
(齋藤寛)
(日本、カナダ)
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