日系人が2割のミクロネシア連邦、万博ナショナルデーで大統領訪日、大阪でビジネスフォーラム開催
(日本、ミクロネシア連邦)
大阪本部海外ビジネス推進課
2025年08月08日
ミクロネシア連邦(FSM)資源開発省は7月30日、ウェズリー・W・シミナ大統領が2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)での同国ナショナルデーに合わせて訪日した機会に、大阪でFSM日本ビジネスフォーラムを開催した。
FSMはフィリピンの東に浮かぶカロリン諸島に属する607の島、4つの州で構成する島しょ国だ。1914~1945年の約30年間、日本が占領・統治していたこともあり、日系人が人口の約2割に上る。シミナ大統領はフォーラムのあいさつで、FSMの総陸地面積は約700万平方メートルと小さいが、排他的経済水域(EEZ)は100万平方マイルを超えると説明し、各州は固有の歴史や自然景観があり、再生可能エネルギーを用いた自給自足可能な体制を推進していると述べた。また、2024年には2011年に制定した貿易政策の抜本的な見直しを行い、新たな貿易政策実行計画を策定したが、この計画では2024~2040年に貿易・投資を中心とした持続可能な経済発展に向け、ビジネスアイデアを花開かせるための適切な環境整備と活気ある民間部門の育成に注力するという。FSMではどんな投資も社会的包摂性を大切にし、多様性のある文化を尊重すべきとしていると述べた。さらに、外国企業にとって魅力的な投資先となるよう、規制緩和など制度面の改革とインフラ整備を推進し、投資家にとってアクセスしやすく、低コストの事業運営ができる環境と整えたいとした。日本企業にはFSM企業と連携し、地域社会を豊かにする明るい未来づくりに資する取り組みを願いたいと呼びかけた。
スピーチするシミナ大統領(ジェトロ撮影)
次に、太平洋諸島センター(PIC)の斎藤龍三所長がFSMと日本の経済関係を説明した。日本の対FSM輸出額は2019~2023年に年間15億~25億円で、主な輸出産品は自動車だ。一方、日本の対FSM輸入額は10億~15億円で推移しており、ほぼ全てが魚介類・同調整品と述べた。財務省による2024年末の直接投資残高地域別統計によると、日本の対FSM投資残高は3,123億円で、そのほとんどがキャプティブ(注)だ。製造分野への投資では、大洋エーアンドエフがFSM国家漁業公社と合弁で、2018年からかつお節の生産を行っており、現地の雇用創出と輸出による付加価値拡大に取り組んでいるとした。PICではFSMと日本の経済関係強化に向け、日本で開催された国際食品展「FOODEX 2024」でFSM産のコーヒー、コショウ、シャコガイの酢漬けのサンプル展示を行ったほか、日本人観光客の誘致拡大に向け、インフルエンサーを活用した魅力発信に努めていると語った。
太平洋協会理事長の小林泉氏(大阪学院大学教授)は、FSM各州の概要と歴史や、現地での日系人数の調査、2015年の天皇皇后両陛下(当時)のパラオへの戦没者慰霊訪問時にFSM大統領夫妻と行った会談など、日本との関わりについて説明した。FSM側からは、漁業分野と観光分野の取り組みに関する紹介があった。
(注)企業が自身のリスク管理と、保険コストの削減や財務基盤の強化を目的に設立する再保険会社。
(齋藤寛)
(日本、ミクロネシア連邦)
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