日立エナジー、1億600万ドルを投じ米テネシー州アラモの変圧器部品製造施設を拡張へ
(米国、日本、スイス)
アトランタ発
2025年08月27日
日立製作所子会社で送配電事業を手掛ける日立エナジー(本社:スイス・チューリヒ)は8月20日、1億600万ドルを投じて米国テネシー州アラモの変圧器部品製造施設を拡張すると発表した。日立エナジーは、日立製作所がスイスに本社を置く重電大手ABBの送配電網事業を買収して、2020年に設立した日立ABBパワーグリッドを前身とする。2021年に現社名に変更した。
同社は2025年3月、昨今の深刻な変圧器供給不足を受けた追加投資として、米国の送電網サプライチェーン強化と世界的な変圧器不足に対応すべく、2億5,000万ドル超を投じて米国、アジア、南米、欧州で変圧器部品の製造能力を強化すると発表した(注1)。今回の投資は、この2億5,000万ドル超のグローバル投資の一環となる。電化促進に伴う変圧器の需要増加に対応するため、同社は2024年4月、6月の2回の発表を通じ、2027年までに計60億ドルを投じて変圧器、高電圧製品など送配電機器の生産を強化すると発表
していた(注2)。
今回の拡張投資により、アラモ工場には、製造スペース、倉庫、オフィススペースなど計6万平方フィート(約5,570平方メートル)以上が追加される。その結果、最大800キロボルト(kV)の高電圧直流(HVDC)および交流(AC)送電システム用乾式ブッシングを含む変圧器用ブッシングの生産量が大幅に増加し、同工場は北米最大、世界でも最大級のブッシング製造施設となるとしている。また、統合物流センターと垂直統合型工場の導入により、ジャストインタイム納品を実現させ、外部倉庫の必要性を減らし、業務効率を向上させるという。拡張部分は2027年半ばまでに稼働予定で、100人以上の新規雇用を創出する見込みだ。
日立エナジーの北米変圧器部門責任者のスティーブ・マッキニー氏は、発表の中で「本施設は、人工知能(AI)による急速なエネルギー需要の増大、そして送電網の拡張と現代化に対応する上で重要な役割を果たす。テネシー州で事業を拡大し、国内製造業を強化できることを誇り思う」と述べた。
(注1)2億5,000万ドルのうち、40%超が米国向けの投資で、バージニア州、ミズーリ州、ミシシッピ州の工場の変圧器重要部品の製造能力強化に充てられる。これらの工場は、アジア、南米、欧州の工場とともに、他の変圧器メーカーにもブッシングや絶縁材料などの部品を供給しているという。
(注2)米国向け投資としては、ペンシルベニア州マウントプレザントの高電圧開閉装置・遮断器工場の増強に6,000万ドル、バージニア州サウスボストンの配電・電力・牽引用変圧器工場の増強に2,500万ドル、ミズーリ州ジェファーソンシティの配電用変圧器工場増強に1,000万ドル超が投じられた。
(横山華子)
(米国、日本、スイス)
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