オーストラリア業界団体、バイオメタンを活用した脱炭素化の潜在可能性を調査

(オーストラリア)

シドニー発

2025年08月12日

オーストラリアのバイオエネルギー業界団体であるバイオエネルギー・オーストラリアは7月31日、製造業の脱炭素化とエネルギー安全保障の強化にバイオメタン(注)の戦略的役割を示した報告書「バイオメタンの可能性の解放:オーストラリアの製造業とエネルギー安全保障PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。

天然ガスは現在、オーストラリア経済を支える上で重要な役割を果たしている。同報告書によると、主要な経済部門は2050年のネットゼロの達成目標年以降も、天然ガスへの依存を続けると予測した。一方で、厳格な環境規制による新たなガス田開発の制限などから、将来的に国内の天然ガス供給不足が懸念される。オーストラリアにはバイオメタンの原料となる有機物資源が豊富にある点を踏まえ、長期的には天然ガスからバイオメタンへの移行を進めるべきだと提言した。今後、エネルギー安全保障の強化と産業の脱炭素化を進めるためには、バイオメタン活用に向けたサプライチェーンの構築が急務であり、オーストラリア政府による一貫したインフラ整備やインセンティブ措置に取り組む必要があるとした。

また、同日にオーストラリアの送配電事業者の業界団体であるエナジー・ネットワークス・オーストラリアが発表した報告書「バイオメタンを活用したオーストラリア産業の脱炭素化の可能性PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」では、具体的なバイオメタンの生産能力を分析している。2022/2023年度(2022年7月~2023年6月)に国内で消費された天然ガスが1,077ペタジュール(PJ)であるのに対し、現時点で国内全土から回収可能なバイオメタン(現実的にアクセス可能で合理的なコストで生産可能なバイオメタン)は年間約400PJであるとした。加えて、採算を度外視して技術的に生産可能なバイオメタンは563PJと推定されており、サプライチェーンの成熟度や技術の進展によっては、さらなる活用の可能性があることが示された(添付資料表参照)。

なお、オーストラリア連邦政府は、2024年5月に未来ガス戦略を発表し、新たなガス政策を支える原則と行動計画を示している(2024年5月20日記事参照)。その中でバイオメタンは、(1)グリーン水素など他の再生可能ガスと比較して生産コストが安価であること、(2)既存のガスインフラを活用できることから、ガス供給サプライチェーンの脱炭素化に貢献する可能性が高いとされている。

(注)有機廃棄物などの有機物を熱によるガス化反応により分解し、発⽣させた可燃性ガス(バイオガス)を精製したり、メタン化反応を用いて天然ガスと同程度までメタン濃度を高めたりしたガス。天然ガスと同様に扱うことができる。

(渡部卓人)

(オーストラリア)

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