カンボジア、2026年1月から徴兵法の運用開始

(カンボジア)

プノンペン発

2025年08月25日

カンボジアのフン・マネット首相は7月14日、徴兵法(注1)を2026年1月から正式に運用開始すると発表した。徴兵法は2006年に成立したが、当時は国民の反発もあり、約20年間運用されていなかった。18歳以上30歳以下の国民が対象で、男性は必須、女性は任意となる。兵役期間は18カ月と定めているが、今後24カ月に変更する見込みだ。5月末に発生したタイとの軍事衝突をきっかけに、両国間の緊張が一層高まっているが、フン・マネット首相は特定の国を意識したものではないと説明している。

徴兵対象となった国民は、それまでの企業への所属を維持したまま兵役を行うことができ、24カ月間の兵役を終えた際、企業での勤務を再開するか、国軍所属を継続するかを選択できる。兵役期間中の国家社会保険基金(注2)を企業と国のどちらが負担するかは、8月20日時点で発表されていない。

兵役対象となる人数は明らかにされていないが、労働市場では徴兵による労働力不足などに陥る可能性もあり、今後の情報を注視する必要がある。カンボジアの経済特区に入居する日系企業からは「発表されている情報が少なくて判断できないが、人材不足に陥る可能性があり、憂慮している。徴兵期間にも雇用コストが発生するとなれば、サプライチェーンの見直しも視野に入ってくる」との声が聞かれた(8月6日、ジェトロのヒアリング)。

カンボジアの人口約1,728万人(2024年時点)のうち、徴兵対象年齢の人口は約382万人で、全人口の約22%を占める。2006年に制定された現行の徴兵法によると、僧侶や受刑者、健康上の問題があると判断される場合は徴兵の対象外となる。徴兵の通達を受けた後、30日以内に手続きを行い、入隊する。3回目の徴兵通達までは兵役を保留できるが、免除とはならず、徴兵義務を故意に怠った者は最長で5年の懲役となる。なお、徴兵法の改正に合わせてこれらの詳細も変更される可能性がある。

(注1)運用されると、カンボジアは東南アジアで徴兵制を行う6番目の国となる(運用実態は異なるが、シンガポール、タイ、ミャンマー、ベトナム、ラオスが徴兵制を設けている)。

(注2)労働者のための社会保障制度で、NSSF(National Social Security Fund)と呼ばれ、企業単位の加入が義務化されている。労災保険、健康保険、年金制度が含まれる。

(宮嶋紀輝)

(カンボジア)

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