2025年3月のインドネシア貧困率は8.47%、過去最低を更新
(インドネシア)
ジャカルタ発
2025年08月01日
インドネシア中央統計庁(BPS)は7月25日、2025年3月時点の貧困率が8.47%になったと発表した(注)。過去最低だった前回調査(2024年9月)の8.57%から0.10ポイント、前年同月の9.03%から0.56ポイントの改善となる。貧困層の人口は2,385万人で、前回調査から21万人減少した。3月時点の貧困水準は1人当たりの月額支出で60万9,160ルピア(約5,604円、1ルピア=約0.0092円)だった。
地域別に見ると、農村部の貧困率は11.03%(前回比0.31ポイント低下)と改善した一方、都市部は6.73%(同0.07ポイント上昇)とわずかに悪化した。貧困層の月額支出構成に占める食費は、都市部で前回比2.36%増の46万3,801ルピア、農村部で2.55%増の44万1,494ルピア、食費の内訳では、コメの支出割合が最も多く、都市部で21.06%、農村部で24.91%だった。
BPSのアテン・ハルトノ社会統計担当副長官は「2025年3月の貧困率は過去20年間で最も低い数値」と述べ、貧困率が継続的に改善していることを強調した。また、所得格差を示すジニ係数が2025年3月時点で0.375と、2019年以降で最低水準まで改善したと指摘した(「アンタラ」7月25日)。
プラセティオ・ハディ国家官房長官は「プラボウォ・スビアント新政権は貧困削減を最優先課題と位置付け、2029年までに極度貧困をゼロにする目標を掲げている。今回の貧困率改善は政府や民間など関係者の取り組みの成果だ」としつつ、貧困対策には企業や地域社会、教育機関の参画による雇用創出と起業促進が重要と述べた(「アンタラ」7月25日)。
一方で、専門家からは、この統計が国民の生活実態を正確に反映しているかについて、疑問の声も上がる。インドネシア経済改革センター(CORE)のエスター・スリ・アドリアニ氏は「政府は世界銀行が定める中所得国向けの貧困ライン(1人1日当たり3.65ドル)を採用すべきだ」と提言している。同氏は、現在のBPSの基準では最低限の食事しか賄えず、日用品の購入や教育費の捻出は不可能だと指摘している。世界銀行の基準を適用すれば、インドネシアの貧困層の数は現在のBPSが公表する数値よりもはるかに多くなるとし、統計上の数字と現実の間に大きな隔たりがあると警鐘を鳴らした。また、インドネシア経済法律研究センター(CELIOS)のビマ・ユディスティラ氏も「より正確なデータに基づいた的確な政策こそが長期的な貧困削減には不可欠だ」と述べ、国家予算への負担が増えたとしても、貧困ラインを実態に即した水準に見直す必要性を訴えている(「ビスニス」7月28日)。
(注)BPSは、貧困を「月間平均支出額が貧困ラインを下回る層」と定義している。貧困ラインとは、食料貧困ラインと非食料貧困ラインの2つの要素で構成し、食料貧困ラインは1人当たり1日2,100キロカロリーに相当する最低限の食料ニーズに費やす金額、非食料貧困ラインは住宅、衣服、教育、健康など、最低限の非食料ニーズに対する支出額とされる。
(八木沼洋文)
(インドネシア)
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