インドネシア政府が知財保護を推進、啓発イベント開催

(インドネシア)

シンガポール発

2025年08月18日

インドネシア知財総局(DGIP)は2025813日から16日にかけて、知的財産(IP)啓発イベント「IP Xpose Indonesia」をジャカルタのスメスコ・インドネシア(Smesco Indonesia)で開催した。本イベントには、国内外からイノベーター、クリエイター、ビジネス関係者、そして知財関係者が一堂に会し、展示、フォーラム、ワークショップ、ビジネスマッチング、コンテスト、専門家による相談会、表彰といった多岐にわたるプログラムが実施された。これらのプログラムを通じ、経済発展における知財活用の重要性を啓発し、また知財の具体的な活用方法を紹介した。

写真 (左)エグゼクティブフォーラムの様子、(右)ブース展示の様子(ともにジェトロ撮影)

(左)エグゼクティブフォーラムの様子、(右)ブース展示の様子(ともにジェトロ撮影)

インドネシアは長年にわたり、米国スペシャル301条報告書(注1)で監視国または優先監視国に継続して指定されるなど、知財保護環境の課題が指摘されてきた。そのため、インドネシア政府は、国内の知財関連法令の改正や知財権のエンフォースメント環境の強化、国民への普及啓発などに注力しており、今回のイベントはその一環として開催された。

2024年特許法改正、細則や運用に課題

さまざまな取り組みが積極的に進む中で、新たな課題も生じている。2024年10月に施行された特許法改正は、特許の保護対象の拡充や、早期審査、再審査といった新たな手続きの導入など、多岐にわたる重要な変更が行われた。しかし、改正に係る細則や具体的な運用についてはいまだに不明な点も多く、現場では混乱が生じている。例えば、特許権者に義務付けられた特許実施報告書の提出については、様式がDGIPのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公開されたものの、提出手続きや要件はいまだに明らかになっていない。企業によっては毎年の特許料支払手続きにあわせて自主的に提出しているケースもあるが、公式手続きではない。また、最近ではオンライン提出の機能の導入や各年の具体的な提出期限についての情報が法律事務所から提供されているが、提出期限については、ジェトロによる当局関係者へのヒアリング内容と齟齬(そご)も見られ、DGIPによる公式発表が待たれる(注2)。

(注1)米国通商代表部(USTR)が1974年通商法182条に基づき、知財保護やその侵害に対する取り締まりなど執行が不十分な国の状況に関して毎年作成する報告書。懸念が大きい国を、順に「優先国」「優先監視国」「監視国」として指定している。

(注2)インドネシアでの知財関連の活動は、ジェトロ・シンガポール事務所の知的財産部が、ジャカルタ事務所と協力して取り組んでいる。知財に関するご相談はシンガポール事務所知的財産部にご連絡いただきたい。

(西尾元宏)

(インドネシア)

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