ペルー議会、所得税率引き下げを盛り込む農業法を可決

(ペルー)

リマ発

2025年08月22日

ペルー議会は8月20日、農業の近代化のための社会的保護と生産性・競争力・持続性の向上のための法律(通称、農業法)の法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を可決し、公布のために行政府に送付した。農業灌漑省(MIDAGRI)と経済財政省(MEF)は容認する姿勢を示しており、9月10日までに公布される見込みとなった。

同法は、農業従事者の能力開発や農業法人の組織強化により、ペルー農業の競争力を高めることが目的となっている。対策の一環として、所得税率の引き下げも盛り込まれたが、実質的に恩恵を受けられる企業と個人は限られそうだ。

企業の場合、法人所得が年間1,700UIT(約3億8,199万円、注)以上で、所得の8割以上が農産物の生産・販売などによるものであることなどの条件を満たせば、2026年から2035年まで法人所得税が15.0%になり、2036年から通常の税率(現行は29.5%)に戻る。また、同時期に建設した灌漑施設など投資額の一部について、現行法での規定を引き継ぎ、年20%の加速償却を認めるとしている。

同法細則は公布後120日以内に政府が公表することとなっており、詳細は関係省庁がこれから詰める。ペルー農業生産者団体連合会(AGAP)は、この法律が農業分野への投資を促し、インフォーマルな労働や組織の正常化につながり、農業の競争力が強化されるとして歓迎している。

個人の場合、農業生産計画法(法律第30,978号)に基づいて、農業生産者登録(PPA)の手続きを行うことを条件に年間最大150UIT(約3,370万5,000円)の所得まで所得税の引き下げ措置が取られる仕組みだが、小規模農家や農業関係法人の労働者団体は、この法律には大企業にしかメリットがないとして反発している。

家族や親戚で農作業を行う場合、それぞれがPPA登録を行う必要があり、納税に関する手続きが複雑で負担感を感じるケースもある。またPPAに登録すると、所轄官庁のMIDAGRIのほか、全国身分登録事務所(RENIEC)やMEFなどの政府機関にも登録情報が共有されることに抵抗感がある人もいるとみられている。PPAには、2025年7月25日現在、207万3,892人が登録している。また、農業法人の従業員は直接的な金銭面のメリットがないと感じている。

(注)UITは課税単位。2025年は1UIT=5,350ソル(約22万4,700円、1ソル=約42円)。

(石田達也)

(ペルー)

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