大阪で国内商社商談会を開催、輸出商社を引き付けた企業の商談とは

(日本)

大阪本部海外ビジネス推進課

2025年08月13日

ジェトロは7月29~30日、日用品分野の製品を取り扱う関西地域の事業者を中心とした、国内輸出商社との商談会を大阪で開催した。商談会には、化粧品、美容雑貨、文房具などを取り扱い、海外販路拡大を目指す59の国内事業者と、国内輸出商社10社が参加した。今回で3回目の開催となる。輸出商社が事前に商談希望先を選定し、115件の商談が実施された。商談の結果、参加者の約6割に当たる38の国内事業者が新規販路の開拓につながった。

ウエキ(UYEKI)(本社:大阪府)は、高い忌避率を誇る防虫剤「ダニクリン」がすでに中国市場で好評を得ている中、さらなる輸出対象国の拡大を目的として商談会に参加した。商談会に向けた下準備として、同社の担当者はターゲットとする海外市場に実際に足を運び、競合商品の販売状況を把握するための価格調査や、ダニ・カビに対する現地消費者の意識調査を実施した。商談会当日は、これらの現地調査に基づいた臨場感のある情報を提示したことで、商談相手から高い関心と好感触を得ることができた。商談相手の輸出商社だけでなく、輸出商社の取引先である海外小売店の担当者や、その先のエンドユーザーの視点まで想定した提案が円滑な商談につながった。

同じく商談会に参加した木彫前田工房(本社:大阪府)は、岸和田だんじり祭りで使われる山車などに彫刻を施すことを本業とする。そこで培われた技能を生かし、精巧な升や箸などの木工製品などを制作・販売している。国内での需要が先細りするなか、伝統あるだんじり彫刻の技能を次世代に継承するという志をもって、2023年から海外での販路拡大に取り組み始めた。商談会では、伝統的な技術に裏付けされた幅広いラインアップの提案商品が輸出商社の関心を引いた。

輸出商社側の視点では、日本の製品を海外市場で展開する際に、製品そのものの品質だけでなく、職人の技能や理念といった製品の背景にあるストーリーに着眼し、他社と差別化を図っている。同社が商談会で訴求した、精巧な立体感を生み出す伝統技能の衰退を食い止め、その素晴らしさを世界に発信したいという職人たちの思いは、その差別化要素として強く印象づけられ、同社の大きな強みとなっていた。

写真 木彫前田工房の商品を手に取る輸出商社の様子(ジェトロ撮影)

木彫前田工房の商品を手に取る輸出商社の様子(ジェトロ撮影)

また、輸出商社からのコメントを通じて、国内事業者が輸出商談会に参加する際の課題が複数浮き彫りとなった。ある輸出商社は、「主要な製品の最小ロットでの見積もり書類を最初から用意している事業者とは話がスムーズで助かった」と、入念な事前準備を行った事業者との商談を評価した。他方で、自社製品の輸出に際して必要となる関連機関への登録や、日EU経済連携協定(EPA)などの関税軽減制度の活用について、複数の輸出商社から要望が寄せられた。これらの制度については、すぐに対応できない場合でも、目指す市場における自社の製品の輸入規制や日本との自由貿易協定(FTA)などの締結状況を事前に確認し、概要を把握しておくことが、商談会当日における円滑な質疑応答につながる。さらに、価格表、最低ロット、卸売価格の設定、OEM・ODM生産の可否など、取引条件に関する回答は商談会の前に整理し準備しておくことが重要だ。

(堀阿貴)

(日本)

ビジネス短信 7e88f53811446ebc