7月の米ISM非製造業景況感指数、関税引き上げに伴うコスト増の顕在化が雇用などを下押し
(米国)
ニューヨーク発
2025年08月08日
米国サプライマネジメント協会(ISM)は8月5日、7月の非製造業景況感指数を発表した。非製造業景況感指数は50.1と、前月から0.7ポイントと小幅に低下し、ブルームバーグの市場予想(51.5)を下回った。関税引き上げに伴うコスト増が顕在化しはじめ、雇用など実体経済にも影響を与え始めている様子がみられる。
項目別では、4つの指数の構成要素のうち、ビジネス活動(52.6、前月54.2)、新規受注(50.3、前月51.3)、供給(51.0、前月50.3)(注1)の3項目は基準値の50を上回ったものの、おしなべて前回よりもパフォーマンスは悪化した。また、製造業で見られた傾向と同様に、雇用(46.4、前月47.2)は弱含み、2カ月連続で基準値を下回っている。
指数の構成項目以外では、価格(69.9、前月67.5)は前月からさらに上昇し、2022年10月以来の高水準となったほか、新規輸出受注(47.9、前月51.1)、輸入(45.9、前月51.7)がいずれも基準値を下回るなど、いずれも関税引き上げの影響を感じさせる内容となっている。
企業からのコメントでも、「関税の影響で、機器や資材の調達に追加コストが発生している。これらの調達は継続する必要があるが、追加コストが高額であるため、これに対応するために他のプロジェクトを延期している」(医療・社会福祉)、「最終的な関税の影響を懸念し、来年度の購入計画を遅らせている」(宿泊・飲食サービス)など、関税引き上げが事業の先行きを下押しする要因となっている旨のコメントが散見される。
業種別では、景況感を拡大と回答した業種は全体で11業種、縮小と回答した業種は7業種だった(注2)。
7月の結果から、関税引き上げに伴うコスト増の影響が顕在化し、非製造業でも受注や雇用といった分野に影響を及ぼしていることがみてとれる。特に雇用は最もコスト増の影響を受けているとみられ、雇用統計での労働市場の減速傾向を裏付けるものとなっている。もっとも、関税引き上げの影響のほか、今月は季節要因や天候要因も影響したとも説明されているほか、金融・不動産セクターは依然として堅調で、サービス業全体が実際にどの程度弱含んでいるのかはもう1カ月様子をみる必要があるだろう。
(注1)50を上回ると供給スピードの遅延、50を下回ると改善を示す。供給スピードの遅延は商品の動きの多さを示すので、指数として景況の良さを表す。
(注2)拡大と回答した業種は、運輸・倉庫、卸売り、金融・保険、小売り、その他サービス、企業管理・サポート、行政、不動産、情報、公共事業、医療・福祉。縮小と拡大した業種は、宿泊・飲食サービス、建設、鉱業、教育、農林水産業、レクリエーション、専門・科学・技術サービス。
(加藤翔一)
(米国)
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