オーストラリア海軍、日本の護衛艦「もがみ」型を採用
(オーストラリア、日本)
シドニー発
2025年08月15日
オーストラリア連邦政府のリチャード・マールズ副首相兼国防相は8月5日、同国海軍の次期汎用(はんよう)フリゲート艦として、三菱重工業が提案した能力向上護衛艦「もがみ」型を採用したと発表した。同政府は、2023年3月に「原子力潜水艦能力獲得計画」を発表し、国家安全保障の強化とインド太平洋地域の安定への貢献を掲げていた。翌2024年2月には水上戦闘艦隊に関する国防戦略を見直し、新たな汎用フリゲート艦の就航計画を承認した。今回の採用は、これらの計画の中で政府が行った最大規模の調達となる。
今回の計画には、10年間で100億オーストラリア・ドル(約9,600億円、豪ドル、1豪ドル=約96円)が割り当てられる。全11隻のうち初期の3隻は日本で建造し、その後の8隻はオーストラリアで建造する予定だ。オーストラリア連邦政府によると、採用の背景には、運用寿命の長さや乗組員の省人化によるコスト減効果などがある。また、採用された「もがみ」型は既に日本で建造が進み、2029年に納入、2030年に運用開始の予定だ。性能面では、防空ミサイル発射能力が従来型より大幅に向上したことなどを挙げ、オーストラリア海軍の他の艦艇との相互運用性にも優れているとした。パット・コンロイ国防産業相は「コスト、性能、納期の順守の面で、『もがみ』型フリゲート艦が明らかな勝者だった」と述べた。
マールズ副首相は今回の発表に際して、日本の中谷元・防衛相と電話会談を行い、日本との関係はますます強固となり、世界でこれほど戦略的に連携している国はほかにないとした。今回の発表は、日本とオーストラリアの間で締結した最大規模の防衛産業協定だ。マールズ副首相は、日本にとっても過去最大級の防衛輸出案件だとし、今後の両国関係のさらなる発展に期待を示した。
中谷防衛相は、「もがみ」型フリゲート艦の採用は日本の防衛産業が国際市場で信頼を高める基盤となり得るとした。また、「オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー(AFR)」電子版8月5日は、インド太平洋で中国の軍事的強硬姿勢への懸念が高まる中、日本とオーストラリア政府の戦略的連携強化を明確に位置づけるものとの見解を示した。
今後、オーストラリアは三菱重工業と共同で調達プロセスを次の段階に進め、2026年初めに三菱重工業、日本政府との最終契約締結を目指すという。三菱重工業は8月5日付プレスリリースで「豪州の次期汎用フリゲートプログラムに、日豪の企業が幅広く参画することで、両国の科学技術分野での人材育成や防衛産業基盤の強化が期待される」と述べた。
一方、「オーストラリアン」紙(電子版2025年8月6日)は、西オーストラリア州パースのヘンダーソン造船所で建造予定の8隻について、建造時期までに国内生産を開始できる保証はないとした。同紙は、具体的な価格決定や生産体制構築が今後の課題となるとの見方を示しつつ、「産業界がこの課題を乗り越えることを確信している」とのコンロイ国防産業相のコメントを発表した。
(山崎美樹)
(オーストラリア、日本)
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