山陰で国際ハッカソン開催、国籍混合チームの新形式をテストラン
(日本、ロシア、中・東欧、中央アジア、インド)
島根発
2025年08月06日
山陰のIT企業を中心とした複数企業で構成されるHack Yakumo実行委員会(注1)は、山陰広域国際ハッカソン「Hack Yakumo」を開催し、7月24日に島根県の出雲市内でビジネスツアーを、同25日に松江市内で成果報告会を行った。
これまで、ロシア・東欧のITエンジニアの日本企業への紹介事業を行うピープルクラウド(People Cloud)(本社:島根県出雲市)が、同社の事業の一環として、ハッカソンイベント「Hack Izumo」を過去4回にわたって出雲市内で開催してきた(2024年3月28日記事参照)。5回目の開催となる今回は、山陰地域の複数のIT企業が実行委員会のメンバーとして参画し、出雲市の枠を超えて山陰全体の広域事業へと発展した。
この拡大に合わせて、内容も一新した。日本での就職を希望するロシア・東欧のITエンジニアだけでなく、山陰地域のIT企業ですでに働いている日本人やインド人のITエンジニアを含む混成チームをつくり、一緒にアプリケーション開発に挑むという、全国でもまれにみる新たなスタイルが試験的に取り入れられた。その狙いとして、(1)優秀な外国人ITエンジニアとの共同作業の経験を得ることで、既存社員の人材育成につながる、(2)ロシア・東欧のITエンジニアが将来、自社に入った場合に一緒に仕事をしているイメージを持ってもらいやすい、といった点がある。
今回のハッカソンのテーマは、a.介護ヘルパーと介護ユーザーの効率的なマッチング、b.オフィスワーカーの健康意識向上と行動変容といった社会課題だ。国籍混合の4チームは、これらの社会課題を解決するアプリケーションをローコード開発プラットフォーム(注2)「Nodeblocks」を活用して開発することに挑んだ。成果報告会では、山陰のみならず、東京、大阪、九州など全国各地から集まった参加者が、各チームが開発したアプリケーションの紹介に熱心に耳を傾けた。
表彰式の様子(ジェトロ撮影)
今回のハッカソンに参加した山陰のIT企業で働くエンジニアからは、「東欧出身などの優れた技術を持つエンジニアたちと一緒に働き、技術面においてこれまで試したことのないさまざまなことに挑戦できたのは貴重な経験だった」など、今回の経験を高く評価する声が多く聞かれた。また、「チーム内で各個人が担当していたパートを統合する作業を行う際に、コミュニケーション面での難しさを感じた」といった率直な声もあり、多様な国籍のエンジニアと一緒に仕事をするうえでの今後の学びにもつながったようだ。
People Cloudの牧野寛代表取締役は「山陰地域で共同体意識をもって高度外国人材活用の機運を醸成していくことを目的に開催した。今後も継続的に開催することで、山陰地域に多国籍の人材がともに働き協創する土壌をつくっていきたい」と今後の展望を語った。
成果報告会の参加者で集合写真(ジェトロ撮影)
(注1)People Cloud(本社:島根県出雲市)、テクノプロジェクト(本社:島根県松江市)、東亜ソフトウェア(本社:鳥取県米子市)などが所属する。
(注2)従来のソフトウエア開発と比べて、コードを書く量を大幅に減らし、視覚的な操作などにより短時間でアプリケーションを開発できるツールや環境。
(薄木裕也、大滝靖子)
(日本、ロシア、中・東欧、中央アジア、インド)
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