インドネシア初の原発計画、規制庁がケラサ島の立地評価調査開始を許可
(インドネシア)
ジャカルタ発
2025年08月15日
インドネシア原子力規制庁(BAPETEN)は7月30日、バンカブリトゥン州ケラサ島で計画されている同国初の原子力発電所について、シンガポール系ソーコン・パワー・インドネシア(TPI)が提出したサイト評価プログラム(PET)とサイト評価マネジメント(SMET)を承認した(8月6日付BAPETENプレスリリース)。これにより、TPIは立地条件に関する詳細な評価調査に正式に着手できる段階となった。
同構想は、米国のオークリッジ国立研究所が開発した技術を採用し、発電容量500メガワット(MW)級の溶融塩炉(TMSR-500)を建設することを前提としている。BAPETENは地震、地質、火山活動、気象・水文、人為的事象、放射性物質拡散の6分野で外的事象評価を行うことを定めていた。7月21~25日には評価官8人が現地検証を行い、審査は当初想定の1年より大幅に短い126営業日で完了した(「ビスニス」8月7日)。
今回の承認は立地評価の着手を認めるもので、建設を許可する「建設用地承認」ではない。エネルギー・鉱物資源省(ESDM)は、建設段階へ移行するには電力系統計画や土地利用計画、環境影響評価(AMDAL)などの関連手続きの完了が必要と説明している(「ビスニス」8月11日)。BAPETENの規定では、建設用地承認、建設許可、運転許可の順に手続きを行うことを定めている。
ソーコン側は2027年の着工、2031年の定格出力での稼働を目標に掲げているが、実現時期は許認可や資金調達の進捗に左右される見通しだ(「ワールド・ニュークリア・ニュース」8月6日)。
インドネシア新原子力エネルギー協会(INNES)のアーノルド・スートリスナント会長は今回の承認発表に先立ち、許認可制度の効率化が進めば初の原子力発電所は5〜10年以内に稼働可能との見方を示していた。また、安全確保には多層防護の原則が不可欠で、いかなる状況下でも放射性物質の漏えいを防ぐ制度的枠組みの整備が必要だと強調していた(「インドネシアビジネスポスト」6月13日)。
(八木沼洋文)
(インドネシア)
ビジネス短信 65c45a0c39720db2