オーストラリア独自の英語教育を担う集中英語センター(IEC)
(オーストラリア)
シドニー発
2025年08月06日
オーストラリアに子女を帯同して赴任あるいは移住する非英語圏からの滞在者は、原則として、オーストラリアの公立学校が独自に実施している集中英語センター(IEC)に、子供たちを一定期間通わせることになる。
オーストラリアでは、教育に関する権限は州政府にあり、州ごとにカリキュラムやガイドラインが定められている。義務教育(注1)の期間も州によって異なるが、初等教育(準備学級とされる5歳ごろから予備的教育を受けることが多い)を終えた後、第10学年までの中等教育が対象となる。義務教育期間のうち、中等教育にあたるハイスクール(日本の中学1年~高校3年に相当)の学齢期を対象に設けられているのが、集中英語センターだ。
オーストラリアでは、年率1.7%で人口増加を続けており、その増加は自然出生数と比べて、海外移民による増加がその3倍を超える。州別人口で国内1位のニューサウスウェールズ州では、年間の移民流入数は20万人を超える勢いだ。移民のうち最も多いのが一時滞在学生(Temporary Students)で、新たにオーストラリアに滞在する学生を受け入れているのが州立集中英語センターだ。
ニューサウスウェールズ州は、新規居住者の該当年齢子女向けに集中英語センターを1970年代の初めて開設して以降、現在は州内に16校設置している。日系企業駐在員が多く住むノース・シドニー地区からセントラルコースト地区には36のハイスクールがあるが、それら居住学区内の学校への入学を前に、駐在員子弟の多くは同英語センターで英語や教育システムの理解を深めることになる。シドニー中心地から電車・バスで50分弱に位置するSt. Ives High School敷地内に設置されているのが、Northern Sydney Intensive English Centreだ(注2)。
20年にわたり同校で日本人を中心としたサポートを続けるシズコ・フェルナー氏(School Learning Support Officer Bilingual)は、「常時10人~25人の日本人子弟が随時入学し、学期ごとに卒業していく。20カ国ほどの子供たちがここで一緒に過ごし、学び、他民族国家であるオーストラリアに早くなじみ、英語力を向上させて自信をもってMainstreamと呼ばれる州立学校に進学できるよう支援していく」と説明する。また学期ごとに、入学・卒業式が繰り返され、2,000人ほどいる州内新規居住者子弟の1割程度が同校で学びを続けているという。
IECが併設されているSt. Ives High School入り口(ジェトロ撮影)
校内敷地に設置されたIEC校舎(ジェトロ撮影)
IECで20年にわたり日本人子弟をサポートするフェルナー氏(ジェトロ撮影)
(注1)義務教育期間はおおよそ6歳から15歳(クイーンズランド州、南オーストラリア州、西オーストリア州では16歳)までだが、その前の5歳ごろから準備学級として予備教育を受けることが多い。初等教育は第1学年から始まり、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、タスマニア州、首都特別地域、北部準州では第6学年まで、クイーンズランド州、南オーストラリア州、西オーストラリア州は第7学年まで(オーストラリアでは初等・中等教育は一貫教育のため学年は通算して数える)。
(注2)本稿は制度概要を記したものであり、実際の受講に際しては、その時点の最新情報について教育機関に確認を要す。
(伊東佐和子)
(オーストラリア)
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