パベル大統領、高リスク労働従事者の個人年金保険への雇用者助成義務を定めた法律に署名

(チェコ)

プラハ発

2025年08月25日

チェコのペトル・パベル大統領は8月21日、私的年金保険の保険料助成義務に関する法律に署名した。これにより、2026年1月1日付で、リスク度の高い一部の職務に従事する被雇用者が任意加入の貯蓄型個人年金保険に加入している場合、雇用者が保険料助成金として一定額を支払う義務が発生する。

対象となる職務は、労働条件要素のうち、振動、低温、高温、または総体的な身体的負担の面でリスク度第3種に属するものだ。職務のリスク度は第1種~第4種に分類されており、各労働条件要素について、リスク度のカテゴリー分類が関連法令により詳細に定められている。

最もリスク度の高い第4種に当たる職務に就く者に対しては、これに先行して承認された年金制度改革により、年金受給開始可能年齢の最大5年の繰り上げが可能となっている。今回署名された法律は、第4種には含まれないが、依然として高リスクとされる作業を行う者に対する救済措置として草案されたものだ。第3種の例として、振動に関しては、128~134デシベル(dB)の振動が手に伝わる作業、総体的身体負担に関しては、30キログラム(kg、女性の場合は15kg)超の重量の運搬作業などが挙げられる。

同法は、上述のリスク度第3種に属する職務を月に3シフト以上行った被用者に対して、その当該月に適用される基本給の4%を、当該従業員の貯蓄型個人年金保険に支払う義務を雇用者に課すことを定めている。

ペトル・フィアラ首相は「これにより、これらの被用者は(早期退職した場合も)年金受給年齢に達する前の期間の生活コストを賄うことが可能となる」と説明している。

一方、企業側はこれに批判的な姿勢を示している。チェコ商工会議所は同法について、内閣可決前日の2025年1月28日に発表した声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「企業の管理業務とコストに多大な負担を与えるもので、特に中小企業に悪影響を及ぼすことになる」との危惧を示している。同商工会議所のラジスラフ・ミンチッチ事務局長は「法案は、雇用主に対して新たな義務を課し、多大なコスト負担を伴うものだ。貯蓄型個人年金保険への直接資金補助義務に加え、雇用主は社内手続きの変更、労働シフトや拠出金の記録システムの整備などの必要が生じる。これは管理業務負担の増加だけでなく、情報システムや給与システムの改修コストの発生をも意味する」と指摘している。

(中川圭子)

(チェコ)

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