シンガポール、米関税措置に伴う経済戦略見直しで5委員会発足
(シンガポール)
シンガポール発
2025年08月07日
米国関税措置に対応するシンガポールの政労使タスクフォース「シンガポール経済レジリエンス・タスクフォース」(SERT)を率いるガン・キムヨン副首相兼貿易産業相は8月4日、長期的な経済戦略を見直すため、5つの委員会を発足させることを発表した。各委員会は今後、企業や労働者など幅広い関係者と対話を重ね、2026年初めに主要な提言を含めた進捗状況を発表し、同年半ばまでに最終報告をまとめる予定だ。
シンガポールは現在、米国による基本関税10%のみが課されている。SERTは米国の関税措置への対応を目的に4月に発足した。SERTは取り組むべき優先課題として、(1)ビジネスへの影響に関する現状の把握、(2)直近の課題への対応、(3)長期戦略と対応を挙げている(2025年4月18日記事参照)。5つの委員会は、3つ目の長期戦略と対応を検討する作業部会に代わるものとして設置した。
5つの委員会はそれぞれ、(1)国際競争力、(2)テクノロジー・イノベーション、(3)起業家、(4)人的資本、(5)経済再編対応について、経済戦略の見直しを行う(添付資料表参照)。委員会にはそれぞれ2人、大臣代行や国務相、政務次官が委員長として就任した。委員長の10人のうち6人は2025年5月の国会総選挙で初当選して政界入りした若手議員となる。これについて、ガン副首相は会見で「(若手が)異なる視点を提供することで、新たな見方と提言を生み出す可能性」に期待を示した。
国際競争力委員会の共同委員長を務めるジェフリー・シオ運輸相代行兼上級国務相(財務担当)は、同委員会が「新たな成長領域を見極め、思い切った投資をしていく」方針を述べた。シオ運輸相代行は新たな成長分野の例として、先端製造分野を挙げ、「デジタルと製造技術のスキルを組み合わせたもので、将来の国内の労働者の特性に合ったものだ」と指摘した。また、テクノロジー・イノベーション委員会では、人工知能(AI)の普及が大きな焦点の1つとなる予定だ。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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