新内閣の行動計画案、ビジネスと投資を通じた経済発展に焦点
(ウクライナ)
調査部欧州課
2025年08月22日
ウクライナのユリア・スビリデンコ首相は8月18日、新内閣の行動計画案を発表した。計画では、安全保障、尊厳、経済、復興の4つの柱に基づき、12の優先事項が定められている。主な内容は次のとおり。
- ビジネス:2026年末までに50億ユーロ以上の投資誘致、米国との復興投資基金におけるプロジェクトの開始、「メード・イン・ウクライナ(Made in Ukraine)」政策による国内産業の強化、農作物の輸出増加のための「グレイン・フロム・ウクライナ(Grain from Ukraine)」や「フード・フロム・ウクライナ(Food from Ukraine)」(注1)の推進、国営企業の民営化、規制緩和、大規模灌漑システムの建設など
- 安全保障:2026年の総防衛予算を1,200億ドルと想定し、50%以上を国産兵器の調達に支出、軍事産業を支援する法的枠組み「ディフェンス・シティ(Defense City)」の整備、海外企業との兵器の共同生産の加速など
- 欧州統合:2025年末までにEU加盟にかかる6クラスター(注2)の交渉開始
- 汚職対策:デジタル化を通じ、行政の透明性や効率性を確立。電子裁判、電子公証などのデジタルサービスの構築など
- マクロファイナンスと改革:2026~2027年に国際パートナーから370億ドルの資金援助を想定。関税法典の更新、政府支出の監査、IMFの新たなプログラムの実施など
- 医療・スポーツ:メンタルヘルスセンター200カ所、リハビリセンター300カ所の新設、年次健康診断の実施、前線地域の医療従事者の確保など
- 復興:復興基金および包括的な復興計画の創設、住宅、物流、インフラ復興プロジェクトの実施、ウクライナ人の帰還支援など
- 教育・科学:教員の待遇改革、500カ所の幼児教育施設の新設、高等・科学教育への資金投入、対面・遠隔教育の質の向上、職業教育改革など
上記のほか、冬のエネルギー確保、福祉、退役軍人政策、文化が優先事項として定められた。
ウクライナ閣僚会議に関する法では、首相が内閣樹立から1カ月以内に、最高会議(国会)に行動計画を提出し、過半数の賛成をもって承認されることが定められている。
スビリデンコ首相は、専門家や企業関係者などから行動計画案に対する意見を集め、閣僚会議で承認のうえ、最高会議に提出する予定だ。
(注1)グレイン・フロム・ウクライナは、2022年11月に設立された人道的食料プログラム。ロシアによるウクライナ侵攻によって従来の食料サプライチェーンが破壊されたことにより、食料危機に直面しているアフリカ・アジア諸国にウクライナの穀物を供給することを目的としている。これをシリアの難民などに対する支援に拡大したのが「フード・フロム・ウクライナ」だ(2025年4月4日付地域・分析レポート参照)。
(注2)EU法の総体系である「アキ・コミュノテール」の各章を6つの政策体系に分類したもの。
(柴田紗英)
(ウクライナ)
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