国家警備隊とメキシコ日本商工会議所、貨物盗難対策について説明会開催

(メキシコ)

メキシコ発

2025年08月04日

メキシコ国家警備隊(GN)とメキシコ日本商工会議所(カマラ)治安問題委員会は7月22日、カマラ会員企業向けに、GNの貨物盗難対策に関する説明会を開催した。セミナーは首都メキシコ市、中央高原地帯グアナファト州、同ケレタロ州、北部ヌエボレオン州の4カ所をオンライン接続して実施した。カマラ会員企業や貨物輸送を担う関連企業約120社から300人ほどの申し込みがあった。

GNは、(1)エスカロン作戦(Operativo Escalón、注1)、(2)バラム戦略(Estrategia Balam、注2)、(3)ライカ(LAICA、注3)の3つの施策について、民間企業による利用状況や稼働実績、これまでに得た効果を説明した。GN側を率いたクルス・イサック・ムニョス・ナバロ国道・付属施設治安局長は「貨物盗難をゼロにするのは至難の業だが、発生率を下げることはできる。そのためには、われわれが適切な施策を提供し、貨物輸送に関わる企業がそれを利活用するという相互の責任感が必要だ」と呼びかけた。

セミナー当日はメーカーや商社、損害保険会社、輸送会社など、さまざまな業種の企業関係者が集まった。質疑応答では、各サービスの利用開始方法などの実務的な疑問や、実際の被害現場での利用に関する懸念が多数寄せられ、貨物盗難対策に対する日系企業の意識の高さが表れていた。

写真 メキシコ市のセミナー会場、壇上左から久我高輝カマラ会頭、ムニョス国道・付属施設治安局長、野川芳明・在メキシコ日本領事、平沢昌仁カマラ治安問題委員長(ジェトロ撮影)

メキシコ市のセミナー会場、壇上左から久我高輝カマラ会頭、ムニョス国道・付属施設治安局長、野川芳明・在メキシコ日本領事、平沢昌仁カマラ治安問題委員長(ジェトロ撮影)

同日の記者会見では、インフラ通信運輸省(SICT)のヘスス・エステバ・メディナ大臣が連邦管轄の高速道路での貨物盗難・治安改善対策として、4つのアクションプランを発表した。この中には「(強盗犯が乗る車両や違法貨物を輸送する車両が出入りすると言われる)高速道路の非公式な出入口の封鎖」「貨物輸送車の運転手が安心して休憩したり、必要なサービスを受けたりすることができるパーキングエリアの拡充」も含まれ、連邦政府としても高速道路の治安改善に取り組む姿勢がみられる。

直近の調査会社のアンケート調査(注4)によると、「メキシコの主要な課題は何だと思うか」という質問に、45%が「治安の悪さ、犯罪」と回答している(「エル・パイス」紙7月30日付)。進出日系企業にとどまらず、メキシコでビジネスをする企業全体の懸念となっている高速道路上の治安の悪さも含め、治安改善や盗難被害の抑制は現政権にとって喫緊の課題と言える。

(注1)エスカロン作戦(Operativo Escalón):あらかじめ定めた集合時間・場所に集まった貨物輸送車両をGNがまとめて護送するサービス。7月末時点で7つの護送ルートがある。

(注2)バラム戦略(Estrategia Balam):GNが提供するアプリを専用スマートフォンにダウンロードし、アプリを常時起動しておくと、貨物輸送中にGNがリアルタイムで追跡でき、いつでも通報ボタンを押すことができるサービス。運転手が危険を感じて通報ボタンを押すと、GNに通知が届き、近くにいるドローンやヘリコプター、走行車両などで追跡の上、5~10分で現場に駆け付け、被害を未然に防ぐことを目指す。現在は特に貨物盗難被害の多い12州(メキシコ州、グアナファト州、イダルゴ州、ハリスコ州、ミチョアカン州、モレロス州、ヌエボレオン州、プエブラ州、ケレタロ州、サンルイスポトシ州、トラスカラ州、ベラクルス州)が稼働対象州となっている。

(注3)ライカ(LAICA):メッセージアプリ(WhatsApp)を通じて盗難被害を報告すると、24時間365日態勢でGNから被害届の提出などといった被害対応支援を受けられるサービス。

(注4)18歳以上で有効な選挙権を持った1,215人の男女へのアンケート結果。

(渡邊千尋)

(メキシコ)

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