大阪・関西万博で「労働市場における格差是正」セミナー開催
(日本、世界)
調査部欧州課
2025年08月25日
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のテーマウイーク「平和と人権」の一環として、「労働市場における格差是正」セミナーが8月12日に開催された。2025年日本国際博覧会協会主催で、国内外の有識者6人が登壇し、「あらゆる職場で倫理的・社会的に不当な不平等を解消し、異なる属性の人々が平等な機会を得て、健全な企業の成長を実現するためには、どのような施策が必要か」が核となる問いとして、各人のプレゼン後にトークセッションが展開された。
多様な視点から格差是正について発言する登壇者(ジェトロ撮影)
国連大学上級副学長で国連事務次長補の白波瀬佐和子氏がモデレーターを務め、ジェトロ・アジア経済研究所新領域研究センターの山田美和上席主任調査研究員が、核となる問いを考えるに当たって有用な国際的フレームワークとして、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を紹介し、この指導原則が企業の人権尊重責任を規定していることに大きな意義があると述べた。日本ロレアルのバイスプレジデント、コーポレートレスポンシビリティ本部本部長の楠田倫子氏は、民間企業としてサプライチェーンに関与する人々の可能性を引き出し、支援することが可能として、同社が実施している社会的・経済的に困難な立場にいる人々への雇用機会の創出を、購買活動を通じて行うインクルーシブソーシングプログラムに言及した。
オックスフォード大学の貧困と人間開発イニシアチブのサビーナ・アルキレ氏は労働市場の格差がもたらした貧困を解消することはグローバルな挑戦であり、政府やNGO、民間企業などがコミットすることが重要だと訴えた。DEI&B(ダイバーシティー、エクイティー、インクルージョン&ビロンギング、注)イニシアチブをリードしたマレーシア最大の銀行メイバンク・グループのヒューマンキャピタル副社長のナリタ・ナジリー氏は、DEI&Bの推進によって人々の多様性が尊重されて生かされ、組織内外に前向きな影響を与えると語った。ウルグアイ出身で国連ユース担当事務次長補のフェリペ・ボーリエ氏は、若年層は変革をもたらすカギで、ビジネスの未来は異なる世代間の交流や協力にかかっていると述べ、彼らの間に信頼を醸成するための「対話の必要性」を強調した。
(注)DEI&Bとは、Diversity、Equity、Inclusion、Belongingの頭文字を取ったもので、DE&Iに会社への帰属意識を表す「ビロンギング」を加えたコンセプトのこと。
(冨岡亜矢子)
(日本、世界)
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