EU・米国の関税合意、チェコ政府と産業界は評価
(チェコ、米国、EU)
プラハ発
2025年08月04日
7月27日のEU・米国の米国関税措置に関する合意(2025年7月29日記事参照)を受けて、チェコ政府および産業界は一様に合意成果を評価した。
ルカーシュ・ブルチェック産業貿易相のX(旧Twitter)への投稿を基にチェコ通信が報じたところによると、同相は同日、合意は「貿易に重要な安定と予見性をもたらすもの」で、「現状では達成可能な最善の成果」と評価した。
産業界の反応も同様に肯定的だ。チェコ自動車工業会は翌28日、自動車と関連部品に対する関税率15%は決して低くはないものの、さらなる貿易摩擦悪化のリスクが回避され、予見性が回復された点を前向きに評価するとの声明を発表した。同工業会は、米国関税の影響はドイツへの部品輸出などの間接的なものが大半との、2025年3月27日発表の内容(2025年4月9日記事参照)を繰り返し、EUと米国が貿易障壁撤廃のための交渉と戦略的パートナーシップ強化を継続する意思を確認したことが重要と強調した。一方で、同工業会のズデニェック・ペツル理事は、15%の関税は米国内における欧州製自動車の価格上昇を意味し、その需要低下をもたらす可能性があるとの危惧も表明した。「欧州自動車産業が、構造変化、コスト上昇、主要市場における不確実な情勢などへの対処に迫られている状況下で、米国関税も自動車製造のEU外への移転を促す要因の1つとなっている」と、同理事は指摘している。
また、チェコ産業連盟も7月31日発表の声明の中で、貿易戦争の危険性が回避された点を評価すると述べた。特に自動車と関連部品の関税の2025年4月の27.5%から15%への引き下げ、および航空機と関連部品、一部の化学品、ジェネリック医薬品、天然資源に対する関税撤廃を歓迎するとしている。ただし、鉄鋼・アルミニウム製品に対する50%の追加関税が維持された点に遺憾を表明し、欧州で加速する脱炭素化や世界的な過剰生産により大きな負担を強いられているEUの鉄鋼産業を保護するよう、今後も米国と交渉していく必要があると指摘した。また、今後のEUの戦略として、(1)貿易手続き簡素化やデジタル化によるEU域内貿易の促進、(2)インド、ASEAN諸国、中南米などとの貿易促進、(3)イノベーションや高付加価値の技術開発の支援、(4)中小企業の市場環境順応支援、を提唱している。
財務省は、2025年4月に発表したマクロ経済予測の中で、EUへの米国関税が20%(自動車は25%)に設定された場合、チェコの2025年GDP成長率は0.6~0.7ポイント程度押し下げられると予測していた。チェコ通信が7月29日に伝えたところによると、同省は同日の速報で、7月27日のEU・米国合意内容を基に、2025年GDP成長率の低下幅を0.2ポイントに修正した。
(中川圭子)
(チェコ、米国、EU)
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