ジェトロとエチオピア航空、戦略的物流ハブ構想でMOU締結
(エチオピア、日本、アフリカ)
アディスアベバ発
2025年08月28日
ジェトロは8月19日、エチオピア航空(注)グループと戦略的物流ハブ構想に関する協力覚書(MOU)に調印し、日本企業のアフリカ進出における物流課題の解決と、両地域間の経済協力強化を目指すことで合意した。MOUの調印は、東京のジェトロ本部で行われ、ジェトロからは石黒憲彦理事長、エチオピア航空からはレンマ・ヤデチャ・グループ最高商務責任者が署名した。
近年、日本の対アフリカ貿易は海上運賃の高騰、輸送時間の長期化、内陸輸送の負荷などさまざまな課題に直面している。世界160都市以上(うちアフリカ60都市以上)にネットワークを持つアフリカ最大の航空会社であるエチオピア航空との協力により、航空物流による代替輸送ルートの構築を進める。
今回のMOUは第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の枠組みの中で実現したもので、日本政府のアフリカ政策における重要な民間協力案件として位置づけられる。特に、2029年に完工予定のエチオピア新空港建設計画(投資額50億ドル、年間利用者1億1,000万人規模)と連携し、将来的な物流ハブ機能の強化も視野に入れている。
MOUに基づく協力分野は、大きく2つに分けられる。戦略的物流ハブ機能の強化では、エチオピア航空のネットワークを活用した物流ハブの構築、保税倉庫やコールドチェーンといった空港施設の機能向上、持続可能な航空燃料(SAF)への取り組み、新空港建設における技術協力を進める。サービスの付加価値向上では、エチオピア航空制服の現地生産支援、日本食や日本文化要素を取り入れた機内サービスの開発、インフラ技術やドローンを活用した新サービスを展開する予定だ。
なお、翌20日に開催されたTICAD9プレナリーセッション「日・アフリカの新時代を切り拓く(第1部:アフリカのビジネスチャンピオン)」では、レンマ氏が登壇し、「2035年までに世界トップ20の航空会社入りを目指し、272機体を保有し、年間売上高200億ドルを達成したい」と述べた。また「単なる航空会社ではなく、訓練学校や整備サービスを含むトータルソリューションを提供するグループとして成長する。アフリカならではのおもてなしでプレゼンスを高めたい」と、中長期戦略にも触れた。
MOU締結時の様子(ジェトロ撮影)
(注)エチオピア航空は1946年設立のアフリカ最大の航空会社で、スターアライアンス(StarAlliance)加盟航空会社として成田~アディスアベバ便を週6便運航している。アフリカ唯一の医療物資コールドチェーン認証(IATA CEIV)を保有し、日本とアフリカを結ぶ重要な路線を提供している。
(石川晶一)
(エチオピア、日本、アフリカ)
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