ブラック公文、繊維工場やバングラデシュ経済特区と事業展開、デジタル教育の取り組み

(バングラデシュ、日本)

ダッカ発

2025年08月12日

公文教育研究会とバングラデシュ地場NGOのブラック(BRAC)の提携で運営されているブラック公文(BRAC KumonBKL)は、現地衣類製造企業のセントロテクス(CENTRO Tex)の傘下にあるマナミファッションズの工場(マナミ工場)と、住友商事が開発・運営し、日本とバングラデシュの両政府が支援するバングラデシュ経済特区(BSEZ)とそれぞれ提携し、タブレット端末を用いた公文式の算数の学習を提供する事業を展開している。2014年の国際協力機構(JICA)によるバングラデシュでの公文式の実行可能性調査への支援が基盤となり、現在の事業につながっている。

セントロテクスは、バングラデシュでアパレル製品のデザイン、調達、製造、供給を行っている。そのうち、製造と供給を担うマナミ工場で働く従業員の子どもを対象に、CSR(企業の社会的責任)として、20253月から公文式の算数学習を提供している。現在では約80人の小学生が工場の敷地内の建物で、毎週土曜日から水曜日の午後2時~午後530分に、3クラスに分かれて学習している。マナミファッションズのモーシン・ファイザル代表取締役社長は「公文式の導入によって、子どもたちの生活習慣が変わった。特にこれまで時間どおりに学校に行くことができなかった子どもが早起きをして登校するようになり、自分で必要な荷物を準備できるようになった。子どもたちの成長が従業員のモチベーション向上につながり、工場の生産性を高めている。教育はバングラデシュの成長にとって必要不可欠で、グループ内の他工場や取引先工場への普及を図っていきたい」と語る。

写真 マナミ工場で公文式を学ぶ小学生(ジェトロ撮影)

マナミ工場で公文式を学ぶ小学生(ジェトロ撮影)

また、BSEZCSRの取り組みの一環で、近隣のソンパラ小学校で公文式学習を導入している(2024年10月9日記事参照)。大きな特徴は公立の小学校と提携していることだ。現在、授業が始まる前の午前8時、授業終了後の午後4時から、合わせて約35人の生徒が学習している。BSEZの河内太郎社長は「ソンパラ地区に住む子どもたちは、経済的な理由で恵まれない環境で生活をしている。お金やモノではなく、将来にわたって残る価値を提供したいとの思いから、教育機会の提供を決めた。また、子どもたちが将来、BSEZの入居企業で働けるように職業訓練校の設置も検討を進めている。この取り組みを通じて担当社員も成長できるため、人材育成の観点でも意義があると感じている」と語る。

写真 ソンパラ小学校で公文式を学ぶ生徒(公文教育研究会提供)

ソンパラ小学校で公文式を学ぶ生徒(公文教育研究会提供)

公文教育研究会でバングラデシュを担当する盛田安芸氏は「このプロジェクトを通じて、学びの機会を得た子どもたちの輝く目に力強さを感じている。BKLとともに、1人でも多くのバングラデシュの子どもたちに『学ぶ楽しさ』を届けていきたい」と語った。

(イスラット・ジャハン、箕浦智崇)

(バングラデシュ、日本)

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