スリランカに20%の米国相互関税、在スリランカ日系企業への影響は限定的との見方も

(スリランカ、インド、米国)

コロンボ発

2025年08月04日

米国のドナルド・トランプ大統領は7月31日、スリランカに対して8月7日から20%の追加関税を課すと発表した(2025年8月1日記事参照)。7月9日発表の30%(2025年7月14日記事参照)から10ポイント引き下げられたかたちだ。

スリランカ政府は4月以降、米国政府と相互関税を巡る協議を実施してきた。7月9日の発表以降も米国政府との交渉を継続し、7月25日にはアヌラ・クマーラ・ディサーナーヤカ大統領が米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表とオンライン会談を実施していた。

ジェトロは、米国の相互関税が与える自社事業への影響や対応策について、スリランカで製造した製品を直接または間接的に米国に輸出している、在スリランカ日系製造企業4社に話を聞いた(取材日:8月1日、本文中にはA~D社と記載)。

事業への影響について、3社が「限定的な水準にとどまる」という見通しを示した。ジェトロが4月に同様のヒアリングを実施した時点と比較して、マイナスの影響が若干緩和されたような印象がうかがえた(2025年4月8日記事参照)。

A社は、米国市場でインド企業と競合しているが、スリランカへの追加関税率がインド(25%)を5ポイント下回った点を評価した。4月発表時点では、スリランカへの追加関税率は、インドよりも18ポイント高い44%だった。B社は、4月発表時点では、競合国より税率が高く受注減を見込んでいたが、今回の発表でインドやバングラデシュ(20%)、パキスタン(19%)など周辺国と同程度になったため、想定よりも減少幅は小さくなる見込みだとした。

今後の対応策については、A社およびC社は、関税増の負担割合や販売価格を顧客と協議した上で、米国向け輸出を再開していく構えだ。両社では、8月以降の税率変更が予想されていたため、直近では米国の顧客からの新規受注が止まっていた。D社は、10%のベースライン追加関税(2025年4月3日記事参照)が適用された4月以降、卸価格を一定金額値下げしており、今後の値下げ幅を顧客と再協議していく予定だ。その上で、「関税の変動幅が大きく、頻繁に変更される。来年以降の予算策定や新規投資の計画が難しい」と話した。

(大井裕貴)

(スリランカ、インド、米国)

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