外資系企業による市場調査を2026年3月から制限

(ロシア)

調査部欧州課

2025年08月08日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は7月31日、外資系企業による市場調査を制限する法案に署名した(連邦法第351-FZ号「ロシア連邦における商業活動の国家規制の原則に関する連邦法の改正について」)。2026年3月から外資比率20%超の企業や外国人による市場調査を一定の条件下で禁止するほか、調査で使用するデータベースや施設をロシア国内に置くことなどの要件を設ける。

今回成立した改正法によると、商品の市場構造に関するデータ処理や分析サービスが規制対象の活動とされる。商品市場の定義については、競争保護法の規定に基づくとしており、同法によると、「商品」には物品だけでなく、役務やサービスも含むとみられる。

国際条約で別途定めのない限り、外国資本の比率が20%を超えるロシア法人や外国人による調査が禁止となる。加えて、調査実施に当たり、a.調査に使用される技術的手段をロシア国内に設置すること、b.外国などによる対ロシア制裁の国内での実行を阻止すること、c.不正確なデータを使用しないこと、また、そのようなデータをインターネット上に掲載しないことを主な要件として設けた。

事業者は、導入される要件と義務の順守に関する文書をロシア政府が指定する政府機関に2026年5月15日までに提出しなければならない。

同規制は前年の売上高が8億ルーブル(約15億2,000万円、1ルーブル=約1.9円)以下の事業者には適用されない。また、a.調査が調査の実施者または同グループ内の者のために行うもので、他者に結果を譲渡しない場合、b.調査がロシア政府機関や地方自治体、関係組織の要請に基づく場合、c.調査がロシアの国家情報システムなどを使用して実施される場合も規制の例外とされる。

改正法では、規制導入の狙いについて、調査結果の信頼性を確保するためとした。

「コメルサント」(7月16日)は規制の影響について、ロシアの調査会社の役割が高まり、外国企業との提携が生まれる可能性を指摘する専門家の声を紹介した。他方、市場調査の市場に大きな変化が生じる可能性は低いという見方も示した。今も外国の調査会社がロシアで事業を続けているように見える場合でも、実際には商標使用料を支払い、ブランド名を借り受けて、外国企業から資本や経営面で独立したロシア企業が運営していることが多いためだという。

(浅元薫哉)

(ロシア)

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