日本のIT企業、青島で人材採用を本格化
(中国)
青島発
2025年08月22日
IT人材派遣を手掛けるキャル(東京都)は2025年4月、中国・山東省青島市の複数大学向けに採用説明会を実施し、このほど3人の内定者を確保した。同社にとって中国での人材採用は初めてで、今後も継続的に中国市場での採用活動を拡大する方針だ。
日本政府の試算によると、少子高齢化による労働人口減少とデジタルトランスフォーメーション(DX)推進により、日本国内において2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測されている(注)。同社はこれまで韓国からの採用が中心だったが、韓国でも少子化が進行しており、安定的に優秀な人材を確保するためとして中国市場に注目した。
同社は、青島市内の大学でグループ面接33人、筆記試験6人、最終面接5人のプロセスを経て、3人の学生に内定を出した。内定者には、IT専攻者と日本語学科出身者が含まれる。同社担当者の姜羽欣氏は「日本語学科の学生もITの試験に強く、中国は産学連携が盛んであり実務に近い経験を持つ学生が多い」と評価した。
中国におけるITエンジニア間の競争や転職激化を背景に、同社は新卒採用だけでなく、年齢にかかわらずベテランエンジニアの採用も検討している。また、大学との連携による日本語教育支援や、継続的な採用活動の実施を計画している。一方で、中国の大学と直接、企業説明会を実施するには営業許可や仲介会社が必要であることも判明した。同社はその場合の対応を含め、今後の本格的な人材採用に向けて準備を進めている。
同社の取り組みは、深刻化するIT人材不足への対策の一例として注目される。
4月9日に実施されたIT人材採用説明会の様子(ジェトロ撮影)
(注)経済産業省委託事業「IT人材需給に関する調査」(2019年3月みずほ情報総研)において、2030年のIT人材の需給ギャップは高位シナリオ約79万人、中位シナリオ約45万人、低位シナリオ約16万人と試算されている。
(皆川幸夫)
(中国)
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