香港の消費市場狙ったビジネスが活発化、香港貿易発展局が大阪でセミナー開催

(日本、香港)

大阪本部海外ビジネス推進課

2025年08月21日

関西日本香港協会と香港貿易発展局は7月29日、新型コロナウイルス禍を経た香港の現在の経済・ビジネス状況と今後の商機を紹介するセミナーを大阪で開催した(ジェトロ後援)。

セミナーではまず、訪日インバウンドに関する調査やコンサルティング、PR事業に携わるJapan Tourism Research & Consultancyの清水泰正代表取締役が香港向けインバウンド誘客の概況について講演した。日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2024年の香港からの訪日客は268万3,391人で、香港居住者2.8人に1人が日本に旅行したことに相当する。また、同年の香港からの訪日客のうち来訪回数10回以上と回答した割合は35.1%に上り、1日当たりの消費額が3万6,000円を超えたという。清水氏は、香港からの誘客のポイントは、a.書き言葉と話し言葉の使い分け(繁体字と簡体字の使い分けや、香港、中国本土、台湾で使われる話し言葉の違いの意識など)と、b.その地域でしかできない体験や、地域ならではの食べものをPRすることだと指摘した。後者について、青森県のりんご農園では、りんごの木のオーナー制度を香港向けにも実施している例が紹介された。果樹園スタッフの指導の下で農作業や収穫体験に無料で参加できるほか、実った果実を香港に輸送してもよいサービスだが、自ら農園を訪れる方が多いという。また、岡山県は十数年前から香港市場に「白桃」の売り込みを行っており、「白桃=岡山」のブランディングを確立し、販売と消費、観光をひもづける戦略で、夏の桃狩りを目玉としたチャーター便の誘致を成功させたと語った。今後成長が期待される香港向けインバウンド関連事業としては、ウェディングのほか、ペット同伴旅行、シニア向け旅行商品を挙げた。

写真 香港向けインバウンド誘客のポイントを説明する清水代表取締役(ジェトロ撮影)

香港向けインバウンド誘客のポイントを説明する清水代表取締役(ジェトロ撮影)

香港貿易発展局のリッキー・フォン大阪事務所長は香港の消費トレンドとビジネスの現状について講演した。景気低迷が続くとのイメージを持たれている香港経済について、2023年以降は日本を上回る2~3%程度の経済成長を続けていると指摘した。日本企業の在香港拠点数は2020年から2年連続で減少したものの、2023年以降はむしろ増加に転じている(注)。昨今は現地の消費市場の取り込みに向け、ニトリ、ダスキンによるミスタードーナツ、ゲオホールディングスによるセカンドストリート、パルグループホールディングスによる3コインズといった日本の小売・外食業が香港に相次いで進出しているほか、足元では日本で多店舗展開はしていないローカルなパン屋が進出するケースもあるという。さらに、地方のデザイン性の高いライフスタイル関連製品が香港のセレクトショップで売られる例もみられるなど、良質な製品・サービスを展開する日本の地方企業にもビジネスチャンスは広がっていると述べた。

写真 香港市場の魅力を語るフォン大阪事務所長(ジェトロ撮影)

香港市場の魅力を語るフォン大阪事務所長(ジェトロ撮影)

また、香港市場への輸出については、円安も追い風になっていると指摘した。例えば、香港での日本の鶏卵の浸透については「卵かけご飯」が食されるようになっただけではなく、円安の影響を受けて価格が中国産、タイ産に比べて、割安になったこともあり、普段使いの食材に定着したという。日本産のチンゲン菜も手頃な価格になっていること加え、地元料理に取り入れられている食材という点も重要だとし、売り込みを行う際には現地の食・生活文化への浸透や、使う側の視点を意識することが肝要と語った。

(注)2022年は前年から横ばい(1388社)だった。

(齋藤寛)

(日本、香港)

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