米主要港、5月の小売業者向け輸入コンテナ量は関税の影響で低水準

(米国)

ニューヨーク発

2025年07月11日

全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社のハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(7月9日)によると、5月の米国小売業者向けの主要輸入港(注1)の輸入コンテナ量は、前月比11.8%減、前年同月比6.4%減の195万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算、添付資料図参照)となった(注2)。前年同月比は2023年9月以来の減少で、単月水準は2024年1~3月(月当たり193万~196万TEU)以来の低水準となった。

今後の見通しでは、相互関税の一時停止期間にあたる6月および7月にかけて輸入量が集中すると予想されている。6月は前年同月比3.7%減の206万TEUとなるが、7月は2.1%増の236万TEUと高水準で一定の回復をみせる見込みだ。NRFのサプライチェーン・税関担当副会長のジョナサン・ゴールド氏は「関税の状況は依然として非常に流動的であり、小売業者は、一時停止しているさまざまな関税が実際に発動する前に、ホリデーシーズンに向けて在庫を積み上げるために懸命に取り組んでいる」と述べた。

ただし、一時停止された関税が8月に発動されれば、輸入量は秋から再び下落する可能性が高い。2025年の今後の見通しは、2024年後半に米東海岸とメキシコ湾岸の港湾スト(2024年10月7日記事参照)の懸念から輸入が増加していたこともあり、8月は前年同月比10.4%減の208万TEUとなるほか、9月は19.9%減の182万TEUと2023年12月の187万TEU以来の低水準に落ち込むとみられる。また、10月は19.2%減の181万TEU、11月は21.3%減の170万TEUとなる見込みで、単月水準・前年比両面で大幅な減少が予想されている。

ハケット・アソシエイツ創設者のベン・ハケット氏は、「トランプ政権による関税関連の発表が相次ぎ、サプライチェーンの不確実性をさらに高める結果となった」「グローバル・サプライチェーンは、円滑で予測可能な貿易環境において最も効果的に機能する。しかし、不安定な政策と地政学的な変動との闘いを強いられている」と指摘した。

ドナルド・トランプ大統領は7月7日に、相互関税の適用停止期限を8月1日まで延期した一方(2025年7月8日記事参照)、各国に対して相互関税の新税率を通告(2025年7月10日記事参照)するなど、関税を巡る緊張は再び高まっている状況だ。足元では、中国から米国への衣料品輸入額は4カ月連続で減少しており、5月には22年ぶりの低水準に落ち込み、中国に対する高関税の影響が浮き彫りになった(ロイター7月9日)。

(注1)主要輸入港は、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトルおよびタコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミおよびジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港を指す。

(注2)発表されている貨物量のTEUと前年同月比の数値は端数処理の関係で一致しない場合がある。

(樫葉さくら)

(米国)

ビジネス短信 f408e7d682ed3a8c