トランプ米政権、太陽光・風力発電補助の運用厳格化に関する大統領令発表
(米国)
ニューヨーク発
2025年07月10日
米国のトランプ政権は7月7日、太陽光・風力発電に係る補助の運用厳格化に関する大統領令を発表した。「大きく美しい1つの法(OBBB)」の下院可決に際し、ドナルド・トランプ大統領が財政保守派に約束した(2025年7月4日記事参照)と報じられていた内容が早くも具体化したかたちだ。
この大統領令は、太陽光・風力発電を「高価で信頼性の低いエネルギー」とした上で、こうしたプロジェクトの増加が「手頃な価格で信頼性が高く、出力調整可能な国内のエネルギー源を奪い、電力網を危険にさらし、自然景観を損なう」と批判している。また、これらに対する補助は「外国の敵対勢力が支配するサプライチェーンへの依存につながり、米国の国家安全保障を脅かす」と断じ、是正のために以下の措置を講ずることを求めている。
(1)財務長官が講じる措置
- OBBB施行後45日以内に、インフレ削減法(IRA)に基づくクリーン電力クレジット〔内国歳入法(IRC)45Y)〕、クリーン電力投資クレジット(IRC48E)による風力および太陽光の発電施設への税額控除終了(原則として2027年12月31日より後に稼働するものは税額控除を認めない)を厳格に施行するため、必要かつ適切と認められる全ての措置を実施する。特に、OBBBに基づく特例措置(1年以内に建設を開始した場合には、2027年以降の稼働でも税額控除の対象とする措置)に関しては、「人為的な早期化や資格操作を防止し、対象施設の相当部分が建設されていない限り、特例の利用を制限する」べく、新規もしくは改定ガイダンスを発行する。
- OBBB施行後45日以内に、同法に従って、「懸念すべき外国の事業体」の税額控除活用を制限するため、適切と考えられる措置を迅速に実施する。
(2)内務長官が講じる措置
- OBBB施行後45日以内に、ほかの電源との比較で風力および太陽光の発電施設に優遇措置を設けている内務省管轄の規制、ガイダンス、政策、慣行を精査・改定し、風力および太陽光の発電施設に対する優遇措置を排除する。
これらのうち特に注目されるのは、財務長官に対して求めている「建設開始」に関する特例措置の厳格化だ。具体的な内容は現時点では不明だが、この大統領令では、大統領令発出から45日以内に講じた措置、または講じる予定の措置を報告するよう求めているため、近日中にガイダンス案が発出される可能性があり、その内容が注目される。
(加藤翔一)
(米国)
ビジネス短信 f2b89c2f60db8970