南アから対米自動車輸出が急減
(南アフリカ共和国、米国)
ヨハネスブルク発
2025年07月24日
南アフリカ自動車ビジネス協議会(NAAMSA)は7月14日、米国が南アフリカ共和国に課した関税が自動車輸出に壊滅的な影響を与え、南ア経済の重要な牽引役の自動車部門に深刻な打撃を与えかねないと報告した。同協議会によると、自動車部門全体で国内製造業の22.6%を占め、11万人以上の雇用を創出している。
NAAMSAによると、南アは2024年に米国のアフリカ成長機会法(AGOA)に基づき、2万4,681台の自動車を米国に輸出し、286億ランド(約2,402億4,000万円、1ランド=約8.4円)の輸出収入を生み出した。しかし、2025年に入り、ドナルド・トランプ米大統領が1962年通商拡大法第232条に基づき、全ての輸入車両と部品に課した25%の関税により、深刻な脅威に直面しつつある。
南アからの対米自動車輸出は2025年第1四半期(1~3月)に73%減少し、その後も4月に80%減、5月は85%減と落ち込みが悪化した。関税の影響は自動車業界全体に表れ始めており、メルセデス・ベンツ南アは米関税措置との関係は否定しているものの、イースト・ロンドン工場での自動車生産を7月末まで停止した。
こうした状況を受け、NAAMSAは自動車産業の中心地での社会経済危機、すなわち、生産の混乱とバリューチェーンでの雇用喪失の危機に対する警戒を呼び掛けた。NAAMSAの最高経営責任者(CEO)のミケル・マバサ氏は「これは単なる貿易問題ではなく、社会経済危機の兆候だ。米国の関税は自動車産業で数千人の雇用を直接的に脅かし、苦労して築き上げた(南アの)産業能力を破壊し、自動車産業が経済の中核を担うイースト・ロンドンのような地域社会を壊滅させるリスクがある」との強い懸念を示した。
5月にシリル・ラマポーザ大統領が訪米してトランプ大統領と会談して以降、両国政府間の協議は継続しているとされるが、進展は見られないもようだ。NAAMSAも引き続き交渉と打開に期待を示すものの、その他の経済団体や専門家でも、厳しい見方が支配的だ。トランプ氏は既に米国との貿易不均衡を理由に、8月1日から全ての南ア製品に30%の追加関税を課すとの書簡をラマポーザ大統領に送付している(2025年7月9日記事参照)。
(トラスト・ムブトゥンガイ、的場真太郎)
(南アフリカ共和国、米国)
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