銅への追加関税50%、最大の銅供給国チリは冷静な受け止め
(チリ、米国)
調査部米州課
2025年07月11日
米国のドナルド・トランプ大統領が7月9日に自身のSNSで発表した銅へ50%の追加関税を課すこと(2025年7月11日記事参照)について、米国への最大の銅供給国であるチリの政府関係者や銅関連企業はおおむね冷静な受け止めをしている。
ガブリエル・ボリッチ大統領は7月10日、本件につき関係閣僚および駐チリ米国大使と協議を行い、「チリにはこうした状況に対処するための組織力がある。経済の専門家による分野横断的なグループを組織し、民間企業とも会合を持つ予定だ」とX(旧Twitter)に投稿した。アルベルト・バン・クラベレン外相は、今回の措置の具体的な影響に対し準備を進めているとした上で、「今回の追加関税はチリに特別に課されるものではなく、銅という製品に課されるものであり、基本的には米国の消費者に影響が及ぶもの」と述べた。
チリ国営銅公社(CODELCO)のマキシモ・パチェコ総裁は、詳細が発表されていない状況で、今後具体的に銅のどの製品に課税がされるのか、全ての国に適用されるものか注視する必要があるとした。また、米国の再工業化に賛同した上で、米国は今後も銅を必要とし続け、米国は引き続きチリのような銅の主要供給国から調達するだろうと述べた。鉱業事業者の業界団体である鉱業評議会のホアキン・ビジャリーノ会長は、中国はほとんど無税で銅関連製品を輸入し精錬能力も高いことから、より魅力的な銅市場になりうるとし、米国の追加関税は中国に非常に有利な状況をもたらすだろうと指摘した。
Global Trade Atlasによると、2024年の米国の銅関連製品(HSコード:74類)の輸入は173億ドルで、チリからの輸入は36%を占めた。一方、チリ側からみると、米国向けの銅関連製品の輸出は全体の12%で、最大の輸出先である中国はシェア52%を占めている。
(佐藤輝美)
(チリ、米国)
ビジネス短信 f158a0c81c89af2f