英政府、イングランド食料戦略を発表、具体的施策は先送り

(英国)

ロンドン発

2025年07月17日

英国環境・食料・農村地域省(DEFRA)は7月15日、イングランド食料戦略を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2025年3月に諮問委員会を立ち上げて議論が行われてきたが(2025年4月1日記事参照)、10の成果目標の提示と既存施策の整理にとどまった。

諮問委員会の議長を務めたダニエル・ザイヒナー担当相(食料安全保障・農村問題担当)は同日の演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「『グッド・フード・サイクル(良い食品の循環)』を立ち上げる」「このビジョンは、より健康的で、より手頃な価格で、持続可能かつ強靭(きょうじん)な、21世紀の英国の食料システムであり、現在そして将来にわたって、経済を成長させ、国を養い、人々を養い、環境と気候を保護するものである」と述べた。

この「グッド・フード・サイクル」は、包括的な食料戦略を策定するための政府の取り組みにおける重要なマイルストーンとされ、次の10の成果目標が掲げられた。

  1. より健康的で環境に配慮した食品の販売を支援する食品環境に改善する
  2. 安全で、手頃な価格の、健康的で、便利な、魅力的な食品の選択肢を全ての人に提供する
  3. イノベーション、生産性、より公正で透明性の高いサプライチェーンに対する投資など、食品業界が繁栄し、持続的に成長するための条件
  4. あらゆる地域で食品業界が人材を引きつけ、熟練した労働力を育成する
  5. 食料供給が環境的に持続可能であり、高い動物福祉基準を満たし、廃棄物を削減する
  6. 貿易が環境的に持続可能な成長を支援し、英国の基準を維持し、輸出の機会を拡大する
  7. 健康的な食品の安定供給のための強靭な国内生産
  8. サプライチェーンのショック、混乱、慢性的なリスクの影響に対する備えの強化
  9. 英国、地方、地元の食文化をたたえ評価する
  10. 人々が地元の食料システムにつながり、健康的に料理をして食べることに自信と知識と技能を持つようになる

一方、具体的施策については、既存施策と成果目標との関係性を整理するにとどまった。

諮問委員会の事務局を運営した食料品流通協会(IGD)が同日発表した文書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、「最初の取り組みでは、健康、食料安全保障、経済成長、環境の持続可能性を進展させる機会に焦点を当てた。次の段階では、10の成果目標を実現するための具体的な政策立案に焦点を当てる」とし、次の大きなマイルストーンは2026年に発表される報告書だとしている。

しかし、食品業界誌「The Grocer」の同日の報道によれば、政府発表の草案に書かれていた「2026年食料白書」の発行に関する言及が政府内部の調整で削除されたとのことであり、2026年に新たな政策を示せるかも不透明だ。

(林伸光)

(英国)

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