エチオピアが政府債券の電子化指針、証券市場のデジタル化を推進
(エチオピア)
アディスアベバ発
2025年07月07日
エチオピア国立銀行(NBE、中央銀行)は6月30日、政府債券とNBE債券の電子化に関する指針「MFAD/001/2025」を出した。紙の証券から電子記録への移行により、市場効率性、透明性、安全性の向上を図る。2025年1月にオープンしたエチオピア証券取引所(ESX)での証券取引基盤整備の一環として位置付けられる(2025年1月31日記事参照)。
指針では、すべての政府・NBE債券を中央証券保管機関(CSD)に登録することを義務化している。CSDは電子記録システムを通じて、証券の発行、所有権、譲渡を一元管理し、現物証券の受け渡しなしに取引決済を可能にする。NBEがCSD運営者として、国際証券識別番号(ISIN)や国内証券識別番号(NSIN)の割り当て、電子記録の維持管理を担当する。政府債券保有者は、CSDメンバー(認可金融機関)を通じて電子化手続きを実施する必要がある。投資家は、政府発行身分証明書や納税者番号など必要書類を提出し、本人確認(KYC)手続きを経て証券口座を開設。CSDメンバーが現物証券を回収し、財務省での真正性確認後、投資家の電子口座に債券が記録される仕組みとなっている。
担保として利用されている債券も電子化対象となる。担保提供者は担保権者との事前協議が必要で、電子化後は「担保設定済み」として記録され、担保契約履行まで取引が制限される。期限内に電子化手続きを完了しない投資家には、額面価値の最大5%の罰金が科される。CSDメンバーが投資家の電子化要請を拒否した場合も、対象債券額面の3%が罰金対象となる。
電子化移行から5年後、手続きを完了していない政府債券は財務省の特別口座に自動移管され、利息などの収益は特別基金に移される。ただし、正当な理由がある場合は、NBEへの申請により債券と収益の払い戻しを受けられる。電子化の完了により、決済期間の短縮、取引コストの削減、透明性向上が図られる見通しだ。NBEは、新聞でのアムハラ語と英語による3カ月間毎月1回の公告を予定しているほか、ウェブサイトへの掲載による債券保有者への周知を行う方針を示している。
(石川晶一)
(エチオピア)
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