インドネシアと米国が19%で関税合意、両国大統領がそれぞれ発表

(インドネシア、米国)

ジャカルタ発

2025年07月22日

インドネシアのプラボウォ・スビアント大統領は7月16日、海外5カ国歴訪からの帰国後、記者団に対し、米国のドナルド・トランプ大統領との直接協議を経て両国が関税引き下げで合意に達したと明らかにした(7月16日付インドネシア大統領府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。トランプ大統領も7月15日(米国時間)、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、インドネシアからの輸出品に対する米国の輸入関税を19%に設定することで合意したと発信した。従来表明していた32%からの大幅な引き下げとなる。正式な協定文や共同声明はまだ発出されておらず、今後、詳細が確認される見通しだ。

トランプ大統領は「インドネシア側は19%を支払い、われわれ(米国側)は何も支払わない」と述べ、合意により米国製品はインドネシア市場で関税や非関税障壁なく販売できるようになることを強調した。同氏は、今回の合意について「史上初めて米国にインドネシア市場への完全なアクセスが開かれる」と述べ 、インドネシアからの対米輸出品に一律19%の関税を課す一方で、米国製品はインドネシアへ無税で輸出できるようになると述べた。

また、合意の一環としてインドネシア側が今後、米国産エネルギーを150億ドル、農産品を45億ドル相当購入すると明らかにした。また、インドネシアの国営航空会社ガルーダ・インドネシアを強化する戦略の一環として、米ボーイング製旅客機を50機調達することも発表した。プラボウォ大統領は、「インドネシアは米国からの燃料やガス、小麦、大豆などの輸入を継続的に必要としている」と述べ、双方が必要とするものを融通し合うことで「両国の利益の接点が見いだせた」と今回の合意を評価した。

現地の受け止めとして、合意内容に対し安堵(あんど)と懸念の声が入り混じっている。ブディ・サントソ貿易相は「インドネシアに適用される19%という関税率はASEAN諸国の中で最も低い水準だ」と述べ、タイ(36%)やマレーシア(25%)など周辺国より有利である点を強調した。同相は、主要輸出10品目の対米競合国の状況を事前に精査した上で交渉に臨んだとし、19%への引き下げは「十分に許容できる水準で、8月1日以降も米国市場に入り込む大きなチャンスとなる」と述べた(「アンタラ」7月16日)。

一方、経済財政開発研究所(INDEF)でエコノミストを務めるリザル・タウフィクラマン氏は、約150億ドルものエネルギー輸入はインドネシアの経常収支に大きな圧力をかける懸念があるほか、「米国製品の市場アクセスが完全自由化されれば、インドネシア国内の航空・エネルギー・鉱業などの分野で国産メーカーが一層の競争圧力にさらされるだろう」との見方を示した(「アンタラ」7月16日)。

(八木沼洋文)

(インドネシア、米国)

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