欧州委、AI法に基づく「汎用AIの行動規範」公開

(EU)

調査部欧州課

2025年07月15日

欧州委員会は7月10日、EUの人工知能(AI)規則(2025年2月13日記事参照、AI法)に基づく「汎用(はんよう)AIの行動規範(General-Purpose AI Code of Practice)」の最終版を公開した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

この行動規範は、AI法第53条(透明性と安全性)、第55条(管理と監督)に定めた義務を満たすべく、次の3章で構成した汎用AIモデル(GPAI)を提供する企業に対する実践的なガイドラインだ。

  1. 透明性:AI法に基づく透明性の義務に対して、必要な情報を文書化する「モデル文書化フォーム」の提供。
  2. 著作権:AIモデル提供者に対し、EU著作権法に準拠するためのポリシー策定の支援。技術的な対応に関するガイドラインの提供。
  3. 安全性とセキュリティー:特に「システミックリスク」(注)を伴う高能力汎用AIモデルに対するリスク評価と管理・運用のガイドライン。

行動規範は13人の専門家とAI企業、中小企業、学術関係者、市民団体など1,000人以上のステークホルダーの協力によって策定された。

同規範は法的義務ではなく、任意のツールで、署名は任意だ。一方で、自主的に署名する企業はAI法への準拠を示し、行政負担の軽減、法的確実性の向上を享受できるとする。

今後の実施スケジュールは次のとおり。

  • 2025年8月2日:AI法の汎用AIに関する規定が正式に適用開始。
  • 2026年8月以降:新しいモデルに対して欧州委のAIオフィスによる執行が開始。
  • 2027年8月以降:2025年8月2日以前に導入された既存モデルにもAI法上の義務を適用。

欧州委によると、この規範はAIの安全性・透明性を確保しつつ、AI法に基づいてイノベーションを促進するためのものという。

(注)健康、安全、公共の安全、社会、基本的権利など、EU市場に重大な悪影響を与える可能性があるリスク(例:モデルに対する制御の喪失、化学・生物・核兵器などの拡散・設計を助ける能力、大規模なサイバー攻撃を自動化・強化する能力、人間の行動や意思決定を欺いて操作する能力など)。

(坂本裕司)

(EU)

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