第1四半期GDPは前年同期比0.9%増、製造・小売り・建設が好調

(ウクライナ)

調査部欧州課

2025年07月04日

ウクライナ国家統計局の発表(6月30日)によると、同国の2025年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率(速報値)は前年同期比0.9%だった。2024年は経済減速が続き、第4四半期(10~12月)はマイナス0.1%と、2023年第2四半期(4~6月)以降初のマイナス成長を記したが、プラス成長を取り戻した。前期比(季節調整済み)では0.7%だった。

5月に発表されたウクライナ経済省のモニタリングレポート(2024年3月)によると、特に製造業、小売業、建設業が好調で、インフラ復旧や住宅再建の予算措置や、防衛産業での国産品の調達、消費者需要の改善などが主要な成長要因となっている。

統計局が発表する景況感指数をみると、2025年第1四半期は110.5を記録した。2023年第2四半期以降、基準値の100を超え、良好な景気を示している。

ウクライナ国立銀行(NBU、中央銀行)が毎月実施するビジネス活動期待指数(BAEI)をみると、1月は41.0と低水準だったが(注)、3月には51.8まで回復し、6月まで50前後で推移している。安定したエネルギー供給や国外からの資金援助、堅調な消費者需要や十分な物品供給がプラスに働く一方、ロシアとの厳しい戦況や原材料・労働力・燃料コストなどの増大、加速するインフレや為替などは引き続き懸念材料だ。

2025年5月のインフレ率(消費者物価上昇率)は前年同月比で15.9%となり、2024年3月以降、上昇を続けている。NBUはインフレ抑制のため、2025年3月に政策金利を15.5%に引き上げた(2025年3月17日記事参照)。夏には新たな収穫や、エネルギー状況の改善、原油価格の低下などにより、インフレは目標値の5%に向かって減速し始めると予測している。

公式為替レートは1月13日に、過去最安の1ドル=42.2841フリブニャを記録して以降(2025年1月21日記事参照)、NBUの為替介入が寄与し、41フリブニャ台で推移している。6月1日時点の外貨準備高は445億3,550万ドルで、将来の輸入の5.4カ月分を保有しており、NBUは外国為替市場を維持するのに十分と分析している。

2025年の経済について、IMFは拡大信用供与措置(EFF)の第8回レビュー(6月30日発表)で2~3%の成長と予測している。巧みな政策と多大な外部支援により、マクロ経済の安定は維持されているものの、エネルギーインフラの損害や労働市場の逼迫により、経済成長が抑制されていると評価した。

(注)NBUによると、1月のビジネス活動期待指数は、季節的要因から低い数値となる傾向がある。

(柴田紗英)

(ウクライナ)

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