タイ政府、トランプ米政権と2回目の通商交渉、対米関税引き下げも検討

(タイ、米国)

バンコク発

2025年07月24日

タイ政府は7月19日、米国の相互関税を巡り、米国通商代表部(USTR)と2回目の公式交渉を前日の18日に実施したと発表した。タイ側から新たな提案を行ったことも明らかにしている。

タイ政府は第1回交渉(2025年7月8日記事参照)の翌7月7日に、修正提案を米国政府に提出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、5年間かけて対米貿易黒字を7割削減し、7〜8年で貿易均衡を達成する目標を伝えたと公表した。米国アラスカから液化天然ガス(LNG)を購入する20年契約のほか、タイ国内化学企業によるエタンの輸入拡大、タイ国際航空によるボーイング機の追加購入も進めている。タイ政府は米国関税措置の猶予期限の8月1日までの合意を目指している(2025年7月8日記事参照)。

タイ財務省(7月19日付同省フェイスブック投稿)によると、上記の修正提案に加えて、農業を含む産業界との協議やストレステストを実施した上で、追加提案を今回行ったという。ピチャイ・チュンハワジラ副首相兼財務相は今回のUSTRとの交渉について、タイ経済の抜本的な見直しや構造改革を進める良い機会だったとコメントしている。

加えて、ピチャイ副首相は、米国に対して関税を引き下げる品目群を検討中で、8月1日の期限までに提出すると明らかにしている(「ネーション」紙7月21日付)。これに関して、パオプーム・ロジャナサクン財務副大臣は「タイが関税撤廃できる品目は、特定の国に既に無税(0%)で開放しているものに限定される。農産品などは無税にすることはできない。経済に即座に影響してしまう」と述べた。また「米国に対して無税を合意した場合、FTA(自由貿易協定)を締結する他国からの同様の要求を断れない」ともコメントしている。

タマサート大学のサムジャイ・パガパスビバット准教授は、今後の関税交渉でタイ側の輸入関税率引き下げ提案が無税、通常の最恵国待遇(MFN)税率、無税とMFN税率の中間の3分類の品目に分かれると予想している(「バンコク・ポスト」紙7月21日付)。また、サムジャイ准教授は、多くのFTAを締結するベトナムと比べて、タイはベトナム以上に関税撤廃することは難しいとの見方を示す。ジェトロのFTAデータベースによると、ベトナムは16件、タイは13件の発効済みFTAを締結している。

報道によると、今回(2回目)の交渉結果がドナルド・トランプ米大統領に報告された後、タイ政府に今後の対応などについて通知が入る見通しだ。ピチャイ副首相は、交渉はまだ終了しておらず、多くの事務的な作業や綿密なフォローが必要との見方を示している。

(藪恭兵)

(タイ、米国)

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