ECOWAS新議長にシエラレオネのジュリウス・マーダ・ビオ大統領が就任
(西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、シエラレオネ、ナイジェリア)
ラゴス発
2025年07月01日
ナイジェリアのアブジャで6月22日に開催された第67回西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)首脳会議で、シエラレオネのジュリウス・マーダ・ビオ大統領が新たに議長に選出された。これにより、2023年7月から2期務めていたナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領は議長を退任した。
ティヌブ大統領は議長1期目就任の当初から、民間セクター主導の経済成長を重視する姿勢を示してきた。また、西アフリカで相次いで発生している軍事クーデターに対し、民主主義の擁護を強く訴え、地域の平和と安全保障に取り組んできた。任期中にはニジェールでクーデターが発生し、ECOWASはそれを強く非難した。軍事介入の可能性も言及しながら、ECOWASはニジェールに制裁措置を講じてきた。
しかし、これを受けて、ブルキナファソ、マリ、ニジェールの3カ国は2024年1月28日にECOWAS脱退を宣言した(2025年1月30日記事参照)。このような厳しい情勢の中で、ECOWASは地域の安全保障、和解、開発を継続して目標を達成すべく、2024年7月にティヌブ大統領を議長に再任した。
ティヌブ議長は2期目では、セネガルのバシル・ジョマイ・ファイ大統領と、トーゴのフォール・エソジムナ・ニャシンベ大統領を、ブルキナファソ、マリ、ニジェールに対するECOWAS特使に任命し、対話と和解を重視した。また、2025年5月28日に開催されたECOWAS50周年記念式典では、地域の団結と若者の役割を強調し、歴史の教訓を踏まえた未来志向のアプローチを訴えた。
今回、新たに就任したビオ議長は、西アフリカが直面するテロやクーデター、気候変動、経済脆弱(ぜいじゃく)性という課題を指摘した上で、4つの優先事項を掲げた。
- 憲法秩序の回復と民主主義の進化:暫定政府との建設的な対話を通じ、法の支配に基づいた民主的制度の強化を目指す。
- 地域の安全保障協力の強化:情報共有や迅速対応能力の向上を通じ、効果的な集団的安全保障体制の再構築を推進する。
- 経済統合の推進:ECOWAS貿易自由化スキームや地域インフラを活用し、特に女性や若者のための雇用創出と貿易の活性化に注力する。
- 機関の信頼性構築:ECOWASの透明性と効率性を高め、市民のニーズに応える制度改革を進める。
ビオ大統領は民主的な選挙で選ばれた国家元首で、シエラレオネはかつての内戦を乗り越えた地域のリーダーシップを担う国として、ECOWASからの大きな信頼が寄せられている。ビオ議長は「人民中心のECOWAS」を強調しており、従来の国家中心の統合から、市民生活に寄り添う地域協力への転換を目指している。
(奥貴史)
(西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、シエラレオネ、ナイジェリア)
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