ブラジルの上半期貿易黒字、前年同期比27.6%減少

(ブラジル、米国、中国、アルゼンチン)

サンパウロ発

2025年07月10日

ブラジル開発商工サービス省(MDIC)は7月4日、2025年上半期(1~6月)の貿易収支(通関ベース)を発表した。輸出額(FOBベース)が前年同期比0.7%減の1,658億6,973万5,735ドル、輸入額(FOB)が8.3%増の1,357億7,724万2,034ドルで、貿易黒字は前年同期比27.6%減の300億9,249万3,701ドルとなった(添付資料表1参照)。MDICは、2025年通年の輸出額を3,419億ドル(前年比1.5%増)、輸入額を2,915億ドル(前年比10.9%増)、貿易黒字を504億ドル(前年比32%減)と予測している。

品目別の輸出額をみると、構成比で15.3%を占める大豆が前年同期比8.9%減だった(添付資料表2参照)。原油・粗油(構成比13.1%、前年同期比10.1%減)や鉄鉱石(構成比7.6%、前年同期比17.4%減)も減少した。MDICで統計・貿易研究を担当するエルロン・ブランドン部長は「輸出量は前年同期比で増加したものの、コモディティーの国際価格が下落したため、輸出額は低下した」と説明した。例えば、大豆は、輸出量が1.2%増加したが、国際価格は10%低下した。鉄鉱石は、輸出量が3.8%増加したものの、国際価格は20.4%低下した。

輸出額を国・地域別にみると(添付資料表1参照)、最大の輸出相手国の中国(構成比28.7%)向けが前年同期比7.5%減少した。米国(構成比12.1%)向けは4.4%増加、アルゼンチン(構成比5.5%)向けは55.4%増加した。ブランドン氏は対中輸出額減少の要因について、対中輸出額の大部分(75%以上)を占める大豆、原油・粗油、鉄鉱石の国際価格が下落したためと述べた。対アルゼンチン輸出の増加は、同国の規制緩和と自動車産業の回復に伴い、ブラジルから乗用車、自動車用部品の輸出が増加したことによる。

対米輸出の増加に関して、ブランドン氏は、トランプ米政権が4月以降に導入した追加関税の対象から、米国向け主要輸出品の原油・粗油(構成比11.9%)が除外されている点を挙げた。また、「ブラジルが米国に輸出するオレンジジュースやコーヒー、食肉などの食料品は、需要の価格弾力性が低く、価格が上昇しても消費が落ち込みにくい」と説明している。

品目別の輸入額を見ると、非電気式の原動機(31.1%増)など資本財や、肥料(19.2%増)、自動車用部品(16.2%増)などの中間財の輸入が増加した。ブランドン氏は、国内経済の成長が資本財や中間財への需要を押し上げていると分析した。

輸入額を国・地域別にみると、最大の輸入相手国の中国(構成比26.3%)からの輸入額は前年同期比22.2%増加した。中国からの輸入増加について、ブラジルを代表するシンクタンクのジェトゥリオ・バルガス財団(FGV)のエコノミスト、リビオ・リベイロ氏は現地紙「エスタード」(7月7日付)のインタビューで、トランプ米政権が導入した追加関税の影響で、中国製品が米国からブラジルへ仕向け地を変更する、いわゆる貿易転換の可能性を指摘した(注)。リベイロ氏によると、中国製電気製品や電子機器の輸入が最近急増しており、この増加を貿易転換によるものと解釈できるという。一方、ブラジル電気電子産業協会(Abinee)は同紙のインタビューで、中国産製品の輸入の動向に「明確な変化は確認できない」との見解を示した。

(注)リベイロ氏の分析は、FGVがMDICの5月までの統計を整理したデータベースに基づいている。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル、米国、中国、アルゼンチン)

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