精密ばね製造のアドバネクス、1,140万ドル投じて米テネシー州の拠点拡張へ

(米国、日本)

アトランタ発

2025年07月01日

米国テネシー州経済開発庁(TNECD)は6月24日、精密ばね製造のアドバネクス(本社:東京都北区)の米国子会社アドバネクス・アメリカス・インクが同州ナッシュビル近郊のホワイトハウスにある本社を拡張することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。1,140万ドルを投じ、56人を新規雇用する予定だ。

アドバネクスは1971年、カリフォルニア州に精密ばね製造・販売の米国法人(旧カトウ・スプリングUSA)を設立し、2021年に1,700万ドルを投じて、米国本社と製造拠点をホワイトハウスに移設した。今回の拡張により、製造、倉庫、事業運営のための6万平方フィート(約5,570平方メートル)を追加する。同社資料によると、建屋面積は現在の2.3倍(約8,700平方メートル)となる。拡張部分の稼働開始は2026年6月を予定する。

アドバネクスは、自動車や航空宇宙、医療、農業など幅広い業界向けに、精密ばね、ワイヤー成形品、ピン、プレス成形品、プラスチック製品、組み立て品などを製造している。同工場は米国内唯一の拠点で、医療向けばねに注力している。2025年3月期決算資料によると、米国での売り上げの9割を医療分野製品が占め、そのほぼ全てが米国内向けという。特にオートインジェクション(注)用ばねの需要が急拡大しており、需要倍増に備えて工場増築を前倒ししたという。

なお、同社資料によると、2021年のカリフォルニア州からテネシー州への移転は、カリフォルニア周辺の人件費や固定費の高騰、主要顧客の州外移転などが要因だった。カリフォルニア州と比較してテネシー州は人件費などの固定費が低く、同社の注力分野の自動車、医療関連顧客へのアクセスの良さなどの利点があったとのことだ。

今回の発表に際し、同州のビル・リー知事(共和党)は「テネシー州の低税率と高度なスキルを持つ労働力は、ビジネスに最適な場所の1つという州の評判を確立している。同社の継続的な投資に感謝する」と述べた。

(注)患者本人や介護者がボタンを押すだけで一定量の薬液を皮下注入できる仕組みで、使い捨ての注射状器具(オートインジェクター)などに使われている。

(横山華子)

(米国、日本)

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