ウクライナ復興会議、外国企業とのインフラ建設プロジェクト加速

(ウクライナ、イタリア、日本)

調査部欧州課

2025年07月18日

イタリアのローマで7月10~11日に第4回ウクライナ復興会議(URC)が開催された。ウクライナ政府の発表によると、70カ国から約6,000人が参加した。議論の焦点は民間資金や人的資本の活用、地方復興、EU加盟と関連する改革だった。URCの結果として、200件以上、総額130億ユーロに上る協定や覚書などが締結された。

ウクライナ復興や経済成長でカギとされているのが国内外の民間資金の活用だ。URCでは、外国企業が関わるプロジェクト関連のビジネス文書も複数締結された。主なプロジェクトは次のとおり。

  • ウクライナの国有電力会社ウクルエネルゴと米国のウェスチングハウスは、原子炉の燃料集合体の組み立てラインの設立を目指す合意書を締結。両者は2022年、AP1000型の原子炉9基をウクライナに建設することで合意している。
  • ウクルエネルゴと米国のホルテック・インターナショナルは、小型モジュール原子炉(SMR)、使用済み燃料キャスク(容器)の製造施設の建設で協力合意書を締結。
  • ウクライナ国家復興インフラ開発庁(復興庁)と韓国の有償資金協力基金(EDCF)は、3都市(オデーサ、ジトーミル、フメリニツキー)での廃棄物由来の燃料(RDF、SRF)を使用した電熱併給プラント(CHP)の建設支援に関する意向書を締結。
  • オデーサ市と韓国のポスコグループは、オデーサでのRDF燃料を使用するCHP建設支援について覚書を締結(2025年4月28日記事参照)。
  • ウクライナの投資会社EFIグループは、2億4,000万ユーロの投資で手掛けるフロートガラス工場「ノバスクロ」の建設に関し、ドイツのホーングラス工業、ツィッペ、イタリアのボッテロと協力協定を締結。
  • 米国のホワイトスター不動産、ウクライナ投資庁、ブチャ市は、ブチャ工業団地とロジスティクスパークの建設について協力覚書を締結。
  • ウクライナ医薬調達機関とスイス製薬大手のロシュは、肺がん・乳がんの医薬品製造施設設立に関する投資協定を締結。ロシュから医薬品の有効成分をバルクで調達し、ウクライナ国内で製剤、梱包(こんぽう)、ラベリングを行う想定。

日本も官民一体でウクライナ復興ビジネスに取り組む。日本政府が1億8,800万ドルを拠出し、国連工業開発機関(UNIDO)が実施する「ウクライナのグリーン産業復興プロジェクト」では、既に約30社の日本企業がウクライナ企業とともに、実証事業に取り組んでいる。URCでは、UNIDOとウクライナ政府がこのプロジェクトの本格的な協力に関する協定を締結した。

(柴田紗英)

(ウクライナ、イタリア、日本)

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